『ミアスの塔』

□第1章 麗しき薔薇の王女 ―セレニア―
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やがて城壁と呼ばれる国
闇の娘の生涯は神話となって語られる

これは過去と未来の狭間を生きた少女の叙事詩


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    ミアスの塔

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第1章
麗しき薔薇の王女
―セレニア―


昔々、草原と樹海に挟まれた北東の地を統べる王国、ミアスがあった。

小さな国ではあったが、この時代、東方の地へ向かう旅人や商人は深い森を抜けなければならず
一度ミアスの国に立ち寄り翌日に越えるのが常。

宿場の国として栄え、また東方との交易もあり王が東国の姫を娶る事もあった。


ミアス国の九代目王クラステスも東国の皇族の娘を后とし、二人の間には多くの王子王女が生まれた。
だが王后は早くに先立ち、その後、誰一人として正后となった者はいなかった。

クラステス王は七人の子供の中で、セレニアと名付けられた末の娘を溺愛し
彼女は誰からも愛される花のような王女に育っていった。



セレニアが7つの頃、まだ幼い王女は広い城を巡っては日に日に見知った領地を拡げていた。

ある日、庭師すら手を出さないバラ園の果て
王女が入るはずも無い場所を、彼女は好奇心のままに分け入り、運命を定める高い高い塔を見つける事となる。


見上げてた塔は古く、ツタが絡み、酷く不気味ではあったが

セレニアはこの塔が気になり、幾度かの躊躇いを越え
錆びて錠前が外れた扉の先にある、禁じられた聖域に足を踏み入れた。


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