神話

□玄天神話 ― 世界創造 ―
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そこに在ったのは“闇”という空間、何も無い空虚に黒き女神のみが存在していた。

そこで生まれたのか、何処からかやって来たのか
長い黒髪と漆黒の瞳、胸に四つ葉の御璽(みしるし)を持つ女であった事、それ以外の真実は何も無かった。

女は人も獣も居ない、況してや地も天も無かった“闇”に立った。

その場所を唯一支配できる存在、女は“女神”と呼ばれた。



女神は既に言葉を持っていた。

その口が最初に開き、描かれた音は神の言葉であった。

「世界に“光”在れ」

言葉は“闇”に消える事なく、頭上高くに光の塊が生まれた。

黄金に眩い“光”の名を、女神は既に持ち、その光を“太陽”と呼んだ。

そして真下に生まれた銀色に輝く塊を“月”と当たり前の様に口にした。


女神は双つ光の間に“大地”を創り別つと、そこに“時”が生まれた。




地上には在るのは太陽

女神は明るいその時を“昼”と呼んだ。




昼の空は果てしない蒼に染まり、女神は大地の上に“水”を敷いて空の蒼を映し
一点の揺らぎも無いそれは“海”と呼ばれた。

海は太陽が暖めた世界に白い“雲”を創り上げ
女神が暖まった“空気”を吸い吐き出した“息”は大地と海に沿って流れ行く“風”となり、海には“波”が起こった。



最初に女神が立った大地に植物の“芽”が生まれた。

女神は言った「この芽は“記憶の大地”と“思慮の甘水”を吸い“希望の太陽”に向かって伸び“知恵”をその枝に実らせるでしょう」と。

神の言葉に従うように、“芽”は一本の“大樹”と成り、女神の“英知”を血の赤に色付く“果実”に孕ませ
そして同時に“災い”が生まれた。


この樹は“知恵の樹”と呼ばれ、その根は“愚行の根”と呼ばれ
世界の中心に植わるそれは地下の国にまで達していた。


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