神話

□玄天神話 ― 人類創造 ―
1ページ/5ページ


さて女神が世界を回り恵みを与え、次の朝を迎えた時

女神は新たに太陽の火を取ると、それを地に置き草木をくべて“煙”を焚かせ
その煙から“魂”を創り、“灰”から人間の型を創り魂の“器”とした。

このため天の眷属である人間の魂は、死ねば天に返らなければならなかった。


女神は四組の男女を創り、それぞれ夫婦とした。

女神に似た黒髪を持つ夫婦は西の国に、茶色の髪の夫婦は北の国に
紫の髪と青い髪の夫婦は東の国に、赤い髪と緑の髪の夫婦は南の国に住んだ。

そして女神は彼らに一つだけ約束をした。

「この世界の何を食べても良いが、神殿にある樹の実は絶対に食べてはならない。もし食べてしまったならば、私は貴方達を殺さねばならない」

それに対し八人の男女は「私達から子孫まで、その実を食べる事も見る事さえもないでしょう」と言った。

嘘を嫌う女神はその言葉に満足し、彼らに神と同じ永い寿命を与え、人間は忽ちに増えて地を満たした。

だが人間は知恵を得ていなかったため、実りに任せたままの食料が無くなれば欲のまま争い、果ては人肉まで食べるようになった。


それに嫌悪した女神は人間を見捨て、神殿に籠もり単独で子供を産んだ。

後に神と呼ばれる種族であり、女神は人間とは逆に知恵の樹の実を与え、手元に置いて育てた。

その中でも特に女神が寵愛した四人こそが、アテラス・レガエル・ヘルセイア・ネイレイエスであった。



英知を持つ彼らが成人した頃、双子の姉弟であるアテラスとレガエルの意見が二つに分かれた。

黄金の髪のアテラスは言った。

「人間が争うのは無知な為であって、知を知り糧を得る方を知れば争いは無くなる。私が人間に知恵を与えれば母も喜ぶでしょう」と。

白銀の髪のレガエルは言った。

「人間が争うのは本能的な欲の為であって、理性を学び得たところで本能が消える事はない」と。

そしてレガエルは続けた。

「姉上が人間に加担し、人間の許に行くという事はこの神殿を離れる事であり、母上はそれを酷く悲しむだろう」


アテラスはレガエルの言葉に少し迷ったが、ヘルセイアはアテラスの意見に同意し
またネイレイエスや多くの弟妹もヘルセイアの雄弁さに心打たれて従った。

「人間をあのまま放っておけば、いつまでも母の憂いとなる。私はそれを取り除きに行く、母の許にはレガエルがいれば良い」

そう言い残してアテラス等は人間界に降り、神殿に残った女神の子はレガエルを含む半数だけであった。

それを知った女神は深く悲しんだが、娘達を連れ戻す事はせず、直に帰ってくると神殿で息子等と共に待ち続けた。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ