ScaredRiderXechS text

□君からのプレゼントは
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補足
・MED後。数年くらい経ってると思ってください。
・相変わらずラブラブな二人。そして相変わらずの誰おま。
・遅刻してすみません。(土下座)





 梅雨入りを宣言されているはずのリュウキュウにしては、珍しく晴れの日が多い。だからオレの誕生日も、朝からずっと晴れて夜には満天の星が瞬いていた。

「星、綺麗だね」
「そうだな。あ、南十字星」
「えっ?どこ?」
「あそこだよ。地平線ギリギリのとこ」

 恒例ともいえる誕生会がお開きになり、でもまだ部屋に帰るのは惜しくて、オレはアキラを誘って夜の浜辺に散歩へ出た。
 星明りが照らす浜辺は、オレとアキラの足音と、打ち寄せる波の音しか聴こえない。
 少しだけ夜風が冷たいけど、はぐれないように繋いだ手のぬくもりがちょうどよかった。
 時折立ち止まっては、空を見上げて星を見つめる。

「今年もパーティ楽しかったね」
「そうだな。でもよ、ケーキが黒糖バナナケーキで、オマケにプレゼントはどいつもバナナだの黒糖だの……」

 アキラがその時のことを思い出してくすくすと笑う。
 祝ってもらえるのは、確かに嬉しい。プレゼントも、もらえて嬉しい。けど、いつもネタにされているものをもらってもな!しかも、揃いに揃ってアイツら!
 こういう時の団結力は、怒りを通り越して感心する。文句を言いつつも受け取ったプレゼントは、多分明日以降の朝食やおやつに活用されるはずだ。

「ったく。来年もこれだったら、オレ本気で傷心旅行に出るわ……」
「あはははっ」

 アキラが大声で笑う。オレはコツン、とその頭を軽く叩いた。

「笑うなっての。本気で悩んでるんだから」

 ごめんなさいと言いながらも、まだその顔は緩んだままだった。はぁ、とため息が出る。全く、地味にアイツらの影響を受けてやがる。
 でもそんなところが憎めなくて、オレはもう一回ため息を零した。惚れた弱みってのは、このことだろうな。

「……そういえばさ。ヒジリくん」

 どのくらい、ただ静かに歩いてたんだろう。沈黙を破ったのは、アキラの声だった。

「プレゼント、渡していいかな?」
「おっ。ようやくくれんのか。待ちくたびれたぜ」

 まるで子供のように、オレは目を輝かせているんだろう。まだアキラからはプレゼントをもらっていなかった。
 大好きな女からのプレゼント。期待しない男がいるならお目にかかりたい。

「何くれんの?もしかして、プレゼントは私、とか?それだったら超嬉しいんだけど!今すぐオレの部屋に直行して、めくるめくあつーい時間」
「ち、ちがっ!そ、そんなつもりは……ごにょごにょ」

 本気半分、冗談半分で言ったつもりだったんだけど……。

「……えーと、その……何かごめん」

 否定なのか肯定なのか、どっちとも取れる反応と暗がりでもわかる真っ赤な顔。何だか恥ずかしくなってきて、何て言ったらいいのかわからなくてとりあえず謝っておく。
 空に瞬く星が、最初に見た時よりも動いていた。時計持ってないからわかんねぇけど、結構時間が経ってるような気がする。いくら門限が緩くなったとはいえ、そろそろ戻らねぇと。

「あー……そろそろ、寮戻るか。プレゼントはまた明日にでも……」
「ダ、ダメッ!今日渡すって決めたの!」

 アキラが言葉を遮るように叫んで、オレは思わず目を瞬かせた。

「ア、アキラ……?」

 一体どうしたっていうんだよ。そう続けようとした時、アキラがオレの頭をぐいっと引き寄せて。

 唇に、一瞬だけどやわらかな感触が触れた。

「…………」
「…………」

 突然の出来事に、思考回路が停止した。
 アキラからキスしてくるなんて、あの時を除けば初めてのことだ。まぁ、あの時は強請ってしてもらったから、カウントするには値しないのかもしれねぇけど。

「……ヒジリくん。プレゼント、なんだけど……」
「お、おう……」

 さっき以上に真っ赤な顔をして、何度も気持ちを落ち着かせようと息を吸っては吐いて。
 そして―――アキラは、口を開いた。


「私、ヒジリくんと家族になりたい……私をヒジリくんの、家族にしてくださいっ」


 ―――息が止まる、なんていうのはこのことなんじゃねぇか。それくらいの衝撃だった。
 いつか伝えようと思っていた、未来を縛る言葉。それをアキラから言われるなんて、思ってもみなかったから。

「ちょ、ま……ええっ!?なん……うえぇ……!?」
「ヒジリくん、ちょっと落ち着いて!?」

 何か言おうにも頭が混乱してて奇声しか出てこない。アキラも、さすがにオレの驚きようは想定してなかったらしくどうしたらいいか困り果てている。

「〜〜〜〜〜〜あぁ、もうっ!」

 オレは勢いよくアキラの体を抱き締めた。痛いって言われるけど、力を緩める気はない。


 ―――結婚して、子供が出来て。じいさんばあさんになったら、日当たりのいい縁側で二人並んで他愛もない話をするっていう、ありきたりな未来。何十回、何百回、何千回……数えきれないくらい、ずっと考えてきた。
 オレの未来にはコイツがいて、コイツの未来にはオレがいる。揺るぐことのない絶対故に、きちんと口にするのが何だか余計恥ずかしくて、オマケにまだきちんとコイツを養える力を持ってないから、いつもいつも茶化してばっか。

 でも……それじゃ、ダメだよな。


「……冗談だったとか、後で取り消すとか、そんなんじゃねぇよな?」
「あ、当たり前でしょ!そんなことするくらいなら、最初から言ってません!」

 背中をポカリと叩かれた。それなりに力が込められていたみたいで、地味に痛ぇ。

「そうだよな……そりゃ、そっか」

 じわり、じわり。心の中に、あったかいものが染み渡っていく。
 それがゆっくりと、身体中に広がっていく。

「なぁ、アキラ」
「……なぁに?」
「……オレさ。家族ってのがどんなのかわかんねぇ。マンガとかテレビとかで見た、理想で固められた家族しか、わかんねぇ」
「うん……」
「だから、さ」

 少し抱き締めるのを弱めて、アキラの顔を見る。その唇に誘われるように、キスをした。


「オマエと一緒に、作ってもいいか?オレの理想の家族」

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