西尾維新:CP

□短編集
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君と僕の情愛


好きだから、触れたいと思うのは普通だろう。
だからこの状態も普通なのだ。

保健室登校児がいつも使っている中央のベッドで、ぼくはそこの主の上に乗っていた。

1.このまま続ける
2.冗談だと流す
3.愛を囁く

ぼくは1と3を選びきれず(初めての感覚だ)同時に行うことにした。


「様刻くんがまさかこの僕を、この矮小で身汚い僕を襲ってくれるなんて、なんて素晴らしいことだろう!」

「たまにはそれらしい言葉が言えないのか、くろね子さんは」


どうやら3は彼女自身の手で消滅したらしい。
あぁ、勝手に進められちゃってるなと思うけれど、相手がこの病院坂黒猫とくれば仕方がないと思えてしまう。

体操服の上をゆっくりと捲りながら現れた小さな臍に舌を這わす。
ブルマから生えた美しい足はすべすべしていて触り心地が良かった。夜月に似ている。
けれど夜月とは違って、大胆に足を広げているのだから少し落ち着かない気持ちになる。


「ねぇ、くろね子さん。ぼくは君を愛してるんだよ」

「それはそれは、光栄の至りだよ!僕も勿論愛しているよ。いつも言っているだろう、君は僕の愛すべき唯一の友人だよ」


残酷に響くその言葉すら愛おしい、これでこそぼくの愛した黒猫だ。
気ままで自由で、でも情は篤い。まさしく猫のような、女。

完璧に脱がしきった体操服を床に落とすと、くろね子さんはニヤニヤと笑っていた。
ぼくの行動を楽しんでいるようだ。


「様刻くんは脱がす派なのだね。
僕としてはこう、首まで上がった状態のままの方が萌えると思うのだが、しかし個人の趣味は尊重すべきだよね。」


上半身を浮かして彼女は動作付きで説明した。
うん、それは確かに萌えるかもしれない。


「元来、男とはチラリズムを愛してやまないものだと思っていたのだが、様刻くん。様刻くんは……」


この状態でいつものように話されては堪らないので唇を塞ぐ。
夜月には禁止された深いキスを堪能してからブラを外す。
身長の割に大きいと自負している乳房は確かにふくよかなもので、ぼくの彼女2人を偲んだ。合掌。

それをくちに含み左手で揉み解しながら、ブルマの中へと手をやる。
ヤバイ、興奮する。

躊躇っていると喘ぐ病院坂が声を出して笑った。


「あはははははははっ」


大爆笑だった。


「何だよ、いきなり」

「いやぁ、様刻くん。慣れないことはすべきではないよ」


涙を拭きながら言う程に笑われた。
ちょっと、いやかなりショックだ。


「いいかい、様刻くん。仮にも君は襲っているわけなのだから躊躇してどうするんだい。
僕はそんなつもりはないが、そして君にもそんなつもりは無いだろうが、しかしこれは所謂レイプだろうのに全く。」


まぁ、確かに同意の上では無かったかもしれないが、襲ってくれて嬉しいみたいなことを言わなかったか、この女。

まだまだ喋り足らないとばかりに思う存分話す彼女から手を放し、上半身を折り曲げて体操服を拾う。


「ほら、もう着ろよ。風邪引くぞ」

「優しいね、様刻くんは。だから僕は様刻くんを愛してやまないのだよ」

「ぼくだって愛しているよ。どうにも伝わらないようだけど」



彼女の愛情は友人としての愛情で、ぼくの愛情は恋愛の愛情で。
実りそうもない初恋だけれど、こんなのも良いかもしれない。
最良の選択をさせてくれない彼女だから、ぼくはこんなにも惹かれているのだろう。

ああ、今日も良い日だ。











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2010/03/05



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