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□頂き物 From恢サマ
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sky blue

小綺麗で小さいパーティ会場。

今日は高校の同窓会。懐かしい面々と顔をあわせる。
私は懐かしくて嬉しい反面、憂鬱な気持ちでいっぱいだった。

会いたいけど、会いたくない人が来てるから。

私は気付かれないように、そっと壁際によりかかってお酒も飲まずにグラスの中の炭酸が消えていくのを見ていた。

『そんなとこで何してんだよ』

『…どうも』

『なにそれ』

なんで気付いちゃうかな…

『隅にいねぇであいつらと話せよ』


『あんたが来る前に話したよ。』

『そういやお前結婚するんだってな』

『は?』

いや、ないない。結婚どころか恋人すらいない。付き合っても1ヶ月も続かないのに結婚なんかありえない。

『なに言ってんの』

『なんだデマかよ』

『騙されんなよ』

『お前今好きな奴いんの?』

…いるよ。

『…いないよ。』

葵は少しだけ驚いた顔をした。

『俺おまえは俺の事好きだと思ってた』

すきだったよ。

今もだいすきだよ

『もの凄く自意識過剰だね。』

『なんとなくそう思ってた

残念。』


嘘つき。残念なんてどうせ思ってないくせに。

『何言ってんだか。』

あきれた顔をしながら、平静を装って答えた。

私のポーカーフェイスは奴のお陰で鍛えられたに違いない。

高校の時よりさらに色気を増し、大人になった葵と、私は一緒にいられない。

ポーカーフェイスだって続かない。

私は逃げたかった。

みんなの所へ行こうと葵の元を離れようとしたら、ぎゅっと腕を強く捕まれた。

『もう少しここにいろよ』

やめて

心臓がおかしくなるから

気持ちを隠せなくなるから
あの女性の事が好きなくせに

私にかまわないで

『…話すことなんかないよ』

『ひさしぶりに会ったのにそれはねぇだろ。卒業してからアドレスも番号も変えやがって。連絡とれなかったじゃねぇか』

少し怒ってて

とても悲しそうだった。

辛かったんだもん

不毛な片想いは

『俺はお前の声聞きたいとか、会いたいって思ってたんだぜ』

うそ

うそだ

『ごめん。…手離して』

忘れたかったのに

忘れられなかった

『なんで高校の時、いきなり俺を避け始めたんだよ』

気付いてたんだ…

『なんで俺の前だけ笑わなくなったんだよ』

気付かれてたんだ

『…そうだよ』

『何言って』

『葵の事好きだったんだよ』

腕を振り切って走り出した

『おい風音!!逃げんなよ!!』

いやだ来ないで

でも動けなかった

来てほしかったから

『ずっと気になってたんだ。俺何かしたのかって

ずっとお前が好きだったから』


誰もいない廊下の隅

壁と葵に挟まれた私は逃げられない。

もう逃げない

『好きだ風音』

真剣に私の目を見ていった後

ひどく切ないキスをした。
葵は相変わらず綺麗で

キスをする顔はすごく艶っぽくて

とろけるようなキスだった。

長い長い

息が辛い

でも

幸せ

舌と舌が絡み合う

熱い熱いキス

まだはなさないで

もう離さないで

sky blue

無器用な愛のかたち

END

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