過去拍手御礼
□ピスキー
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『ピスキー』
D.Gray-man(クロウリー×エリアーデ)
「あ。」
「どうしたであるか、エリアーデ。」
指で示せば、彼は素直にその指の先を辿る。
そこには、蝋燭の側を飛び回る、一頭の蛾。
「蛾、であるな。」
「えぇ。」
何処か青白いソレ。
「…ピスキー。」
小さく呟けば、彼は首を傾げた。
「ピスキー?何で、あるか。」
「イングランドの、場所によっては、そう呼ぶのよ、アレ。」
「ほう。
エリアーデは博識であるな。」
「…ありがと。」
彼より、長く、この世に在るのだから、当然と言えば当然なのだけれど。
もっと、広い世界だって見てきているのだし。
でも、ピスキーの正確な意味は黙っておこう。
(きっと、この可愛い彼を、怖がらせてしまうから。)
「あぁっ!」
二人で、ソレを見つめていれば、クロウリーが、声を上げた。
蛾が、燃えたのだ。
「仕方のないことよ。」
「しかし…」
彼は、あんなちっぽけな虫の死ですら哀しむ。
優しいヒト。
「あの、蛾だってわかっていたことだわ。
火に近付けば、其の身を焦がすことも、命を失うことも。」
そう、まるで、アタシのよう。
愛しい彼に近付けば、いつかは此の身を滅ぼすだろうこと。
わかっている。
わかっているけど。
(それでも)
「愛しているわ、アレイスター。」
せめて、今燃え尽きた、あの蛾に宿った魂が、浄化されたことを祈って。
※ピスキー…イングランド南西部のサマーセット等における、夜、蝋燭の周りを飛ぶ青白い蛾の呼び名。洗礼を受ける前に死んだ子供の魂の化身だと言われている。(水木しげる『妖精画談』より)