あはれなるもの

□末摘花
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「ミードーリータナービクー」
 
 屋上で一人、泣いていれば、何処からか校歌が聞こえてきた。
 凄く、可愛い声。
 
「ナーミーモーリーノー」
 
 でも、屋上には私しかいなくて。
 キョロキョロ見回せば、一羽の黄色い小鳥サンがいた。
 
優しい小鳥サンと出会った日

 
「ダーイナークショォーナクー」
 
 真ん丸で、可愛い小鳥サンは朗らかに、気持ち良さそうに歌っている。
 
「ナーミーガーイイー。」
 
 少し音は外れているけれど、すっごくお上手。
 ふと、小鳥サンが私を見た。
 
「ハクシュ、ハクシュ!!」
「え…えと」
 
 話し掛けられて、びっくりしたけれど。
 素直に拍手。
 すると、小鳥サンが飛んできて、拍手をしていた私の手にとまった。
 うわぁ、すごく人慣れしてる。それにフワフワ。
 
「ないてる、ないてる?」
 
 そう言われて、更にびっくり。
 あわてて空いてる方の手で涙を拭った。
 小鳥サンは、そんな私を首(身体?)を傾げて、じーっと見ている。
 まるで『どうして泣いてるの。』とでも言いたげに。
 
「…ね、小鳥サン。私の愚痴、聞いてもらえる。」
 
 何も小鳥サンは答えてくれなかったけれど、まぁ良いや。
 
「あのね私、振られちゃったの。」
 
 仕方ないと思う。
 だって私の顔には醜い火傷の跡があるから。
 小さい頃、火事に巻き込まれた時のもの。
 
「綺麗でも、可愛くもないから、しょうがないよね。」
 
 笑って小鳥サンに言った。
 きっと、今の笑い方は自嘲の笑み、ってやつだと思う。
 その時、黙って聞いてくれていた小鳥サンが口を開いた。
 
「うつくしいよ。」
「…えっ。」
「キミはうつくしいよ。」
 
 瞬きをしたら、また涙が零れた。
 こんな小さな小さな小鳥サンに慰められるなんて、思わなかった。
 
「なかないで。うつくしいよ」
「…うん、うん、有難う。」
 
 なんて優しい小鳥サンなんだろう。
 
「ありがとう、小鳥サン。」
 


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