果ての月

□契約を交わす、四人の人間と。
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「この敷地と城を使いたいとは、どういうこと。」
 
 四人の魔法使いは、自分達の理想を熱く語る。
 少女は、それを一笑に付した。
 
「人間がこの地で生きるなんて、冗談でしょう。」
 
 マグルではなく、魔法使いと魔女だと、一人の女が言った。
  
「私は吸血鬼よ。
 私にとって人間は、生きる糧。
 魔法使いだろうが、マグルだろうが、私には同じこと。」
 
 一人の男が不満気に口を引き結んだ。
 
「私は孤独に生きる吸血鬼であるつもりはないわ。
 でも、共に生きるのは、同じ世界に生きるもの。人間とは、生きられない。
 でも、私はこの地から出ていくつもりはないし、出ていくことも、出来ない。」
 
 少女は、この地から出られない。
 呪により、縛り付けられている。
 祖母か母か、他の何者かか。
 誰がかけた呪なのかは、解らない。
 
「学校なのに、もしそこで吸血鬼が生徒を襲いでもしたら、どうするつもりなのかしら。」
 
 別の女が、少女を信じていると言った。
 
「では逆に、私に危害が及ぶことがあったら、どうしてくれるのかしら。」
 
 少女は、冷笑した。
 すると、一人の男が言った。
 
「じゃあ、君と契約を交わそう。」
「契約…。」
 
 少女の眉間に皺が寄った。
 
「あぁ。
 この地にいる限り、誰も君に危害を加えることは出来ないように。
 代わりに、君はこの地にいる誰からも、その血を奪うことは出来ない。」
 
 少女は瞬きをした。
 男は付け加えた。
 
「生徒でいっぱいになれば、賑やかになって、きっと楽しいよ。」
 


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