桜花ニ賦ス

□さくら 四十七
1ページ/1ページ

 
 やっぱり沢田君、変。
 先刻も廊下で会ったのだけれど、昨日に引き続き、目を合わせてくれない。
 昨日は移動時間だったからかと思ったけど、次の時間のB組は教室だしなぁ…。
 
 はぁ。
 
 でも、これが普通か。
 私みたいなのに、自分から関わろうなんて、普通なら考えない。
 良くも悪くも、沢田君はそのことに気付いた。それだけのこと。
 そう考えれば、あっさり頷けるのに。頷けるのに…はぁ。
 どうして溜息が出るんだろう。
 
「はぁ…。」
  
 また一つ溜息を吐いた時だった。
 
「佐久良ー!!!」
 
 前方から、了平が現れた。
 
「どうした佐久良、溜息なんて吐くもんじゃないぞ!」
「解ってますよー。」
「それならば良い!」
 
 相変わらず今日も極限のようだ。
 
「了平は相変わらず元気ね。」
「極限当たり前だろう!」
「そりゃ良かった…はぁ。」
 
 どうしてか溜息を吐かずにいられない。
 
「また溜息を吐いているではないか!」
「しょうがないじゃない、出ちゃうんだから。」
「何処か悪いのか?京子の話だと、佐久良が久々に元気になったと言っていたんだがな。」
「京子の話?」
「あぁ。佐久良と沢田が仲良くなったと喜んでおったぞ。」
「沢田君、ねぇ…。」
 
 また溜息。
 
「何だ、溜息の原因は沢田か?極限喧嘩でもしたのか。」
「いや、喧嘩というかなんというか…。」
 
 ごにょごにょと誤魔化せば、了平は何を勘違いしたのか自分の胸を叩いてみせた。
 
「仲直りなら極限オレに任せろ!」
「…へ?」
 
 そう呟いた時には、了平はもう走り出していた。
 
「極限すぐに仲直りさせてやるからな!」
「ちょ、え、了平!?」
 
 あっという間に了平は見えなくなった。
 …廊下は走っちゃいけないと思うんだけど…。
 
(主人公視点)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ