short&finished

□思う白、想う赤。
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 ディーヴァは、言った。
 
「私、彼女といるのに、小夜姉さまと一緒にいる気がする時があるのよね。」
 
 二人、紅茶が注がれたカップを手に。
 キャンバスに向かい、黙々と作業を進める彼女を眺めつつ。
 
「小夜姉さまとは似てないのに。」
「そぉねぇ。」
 
 時々、彼女の髪が、筆を動かすのに連動して揺れる。
 窓から、差し込む陽光。
 
「ネイサンは、何でだと思う。」
「さぁ。」
 
 気の無い返事をすれば。
 
「ネイサンったら!」
 
 少し、怒らせてしまったようだ。
 
「ディーヴァは、何でだと思うの。」
 
 宥めつつ、問い掛ける。
 
「うーん…一緒にいると、楽しいからかしら。」
「小夜といた時は、楽しかったの。」
「小夜姉さまといた時は、楽しくて、幸せだったわ。」
「そう。」
 
 ディーヴァに、微笑んだ。
 ディーヴァは不思議そうに、眼を瞬かせた。
 
「白牡丹と いふといえども 紅ほのか」
「何それ?」
「一寸昔の人が、思ったことよ。」
 
 白を思い、赤を想うのは。
 今に始まったことではない。
 …意味は少し、違うけれど。
 
(青、思う白、繋ぐ紅、想う赤。)
 


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