あはれなるもの

□初音
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「ミク、可愛いね〜。」
 
 ミクにぎゅうと抱き付いて言う私。
 
「そんなことないよ。」
 
 照れるミクも可愛い。
 
「歌も凄く綺麗。」
「有難う。」
 
 歌に関しては、素直に受け取ってくれるあたりにプロ意識を垣間見た。
 次に。
 
「リンちゃん、レンちゃんも可愛い〜、双子萌え。」
「「萌え?」」
「ううん、気にしないで。」
 
 ニッコリ笑って、二人の頭を撫でた。
 
「私、二人のデュエット、好きだよ。」
 
 顔を見合せて、嬉しそうに照れる二人はホント…萌え。
 
「メイコ姐さんはセクシーですね。」
 
 お次の標的はメイコ姉さん。
 
「そう?」
「今度お酒差し入れます。」
「あら、嬉しい。」
 
 時々チラリと顔を出す可愛らしさがまた堪らない。
 
「俺は、俺は?」
 
 なんか自分から訊いてくる奴がいる。
 
「カイトは…仕事も選べないようなヘタレじゃん。」
 
 私の言葉にショックを受けるカイト。
 『ガーン』って感じ。
 
「カイトには興味ありませーん。」
 
 切り捨てれば、更に凹んだ。
 そして、しゃがみこんで「の」の字を書きつつ、ぶつぶつ呟いている。
 顔と声は良いんだけどね。
 他の皆は私とカイトの遣り取りに笑っている。
 なんだあのほのぼのは…可愛いなチクショウ。
 カイトとはまるで陰と陽のようだ。
 よし、私も陽に加わろう、と足を向ければ。
 突然カイトが立ち上がった。
 びくりとして振り返れば、素早く顎を持ち上げられた。
 ぐいっと顔を近付けられる。ってちょ近い近い近い。
 そして。
 
「俺の本気、聴かせようか。」
 
 常より低い美声で囁かれた。
 ……反則だ。

 
『with“Vocal"』
 


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