artistic
□art9-1
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満月の日に、アタイは彼女と出会った。
「何で、そんなとこにいんの。」
アタイは、彼女に問い掛けた。
それは、当然の質問だと思う。
こんな深夜に、屋根の上に腰掛けているなんて、普通じゃない。
(アタイは、小夜達の所でテレビを見てきた帰り。)
彼女は、ゆっくりとアタイに振り向いた。
無表情。
それと、小夜に少し似た、真っ赤な瞳。
風が吹いた。
彼女の白い髪と、白い服が揺れた。
自分に話し掛けているのか、と問うように首を傾げた彼女に、頷いて見せた。
すると、彼女も頷いて、口を開いた。
「何も、無いから。」
彼女の返答に、首を傾げた。
「全部、置いてきてしまった。
今の私には、何も、無い。」
寂しそうに、彼女は言った。
(満月を背にして。)