自然保護隊スターフィル

□第2然
1ページ/1ページ

第2然 スターフィル


「僕の名前はスターフィル・ミラーズ。自然を守るために組織された自然保護隊の一員なんだ」
 その小さな星のようなヒトデのような―――スターフィル・ミラーズと名乗った“それ”は誇らしげに言った。自然を守るために結成された組織『自然保護隊』に所属する1人―――。ロムネは少年ではあろう“それ”を不思議に思いながら見つめる。
「スターフィルっていうの? あなたって、そんなに小さいのに……えっと……その……しぜんほごたい? に所属してるの?」
 スターフィルはくすくすと笑って、答えた。
「まあね。この姿じゃ、自然保護隊に入っているなんてちょっとムリがあるんじゃと思われても仕方ないね」
「?」
「あ、なんでもないよ!」
 ロムネはその言葉がなんとなく気になったが、すぐにスターフィルが気にしないでと言ったため、そこまで追求しようとは思わなかった。

                    *

 目を覚ますと既に朝だった。日差しが部屋の中に入っているためか、窓のほうに目をやると眩しかった。
「う〜ん……」
 背伸びをして部屋の中を見渡す―――しかし、夜に部屋にいたスターフィルという人物は既にいなかった。
「(夢……だったのかな……?)」
 いつも通り母が作ってくれた朝食をとり、いつも通り外に出て風にあたる。全てが昨日と同じ、いつも通りの変わらない風景だ―――が、いつものことなのに、いつも通りじゃない何かを感じていた。あの不思議な夢のような出会いがあったからだろうか。それとも本当に夢だったのだろうか―――青い空を草むらに座りながら見上げ、流れる雲を見つめる。
 ―――昨日と同じやや強い風が吹く。そしてまた、同じ気配を感じた――顔を向けると、そこには夜出会った“彼”がいた。
「あっ!」
 すぐに確かめたかった。すぐに立ち上がり、村の入口にいる彼のそばまで走った。その駆ける音に気づいたのか、彼もまた気づいてロムネの姿を確認する。
「あ……」
「はぁ……はぁ……」
 必死になって急いで走ってきたからか、彼女の息が少し荒い。
「あの……」
「はぁ……はぁ……やっぱり……はぁ……はぁ……夢じゃ、なかったんだね! 本当にいたんだね!」
 ロムネは呼吸を整えながらスターフィルに笑顔で言った。そう言われ、少しスターフィルは驚いたが、すぐに笑顔で頷き返す―――が、すぐにその笑顔は消え、どこか真剣そうな面持ちになる。
「あ、あのさ……聞いてもいいかな?」
「えっ……なに?」
 急に真剣な雰囲気になったと感じ取ったロムネもまた、真剣な表情になる。
「あのさ……もしよかったら君の家にしばらくいさせてもらっても、いいかな?」
「………へ?」
 きょとんとする。どうしてそうなるのか、理解が追いつかないのは言うまでもない。
「で、でも、他の人に見られたりしない? それにご飯とかは? それに、それに…」
「ああもうそこまで! たくさん質問しない〜!」
 たくさんの質問に驚いてロムネの言葉を遮るスターフィル。たしかにいっぱい質問責めにされても答えられないだろう。スターフィルが小さな手のような部分を彼女の前でふりふりさせ、彼女を落ち着ける。
「と、とにかく、まず他の人には見えないよ。マン人は僕のような亜人種は存在しないと思っているからね」
「あ……そっか……」
 この時なぜ亜人種の存在を信じないことが、亜人種の見えない証拠になるのか気になっていた。だが、それを聞く間もなく、スターフィルは次の問いに答える。
「それと、ご飯は大丈夫。夜だけ食べればいいし、こんぺいとうを2,3粒ずつだけでいいんだ」
「こんぺいとう?」
「そうそう」
 スターフィルは頷いた。こんぺいとうくらいなら、ロムネのお小遣いでも買うことはできるだろう。加えてかなり食べる量も少ないため、そこまで負担にはならない。
「で……どうかな」
 そう聞かれ、ロムネは少し考える―――だが結論は変わらなかった。
「うん、もちろんいいわ!」
 その言葉に、スターフィルは軽く安堵の息をついた。
「それじゃ……改めて」
 スターフィルは小さな手を、ロムネに差し出す。
「僕は、スターフィル・ミラーズ。これからよろしくね!」
「よ……よろしく……」
 おそるおそる、ロムネはスターフィルの手を握る。その手は温かいような冷たいような不思議な感覚で、人の温もりに近い―――しかし何か違うそんな感覚だった。
「それで……よかったら君の名前も教えてほしいんだけど」
 そんな不思議な感覚を感じていると、スターフィルがロムネへそう聞いてきた。ロムネはそう言われてぼうっとしていたその感覚から我に返り、スターフィルの顔を見る。
「えっと………―――私はロムネ・ミキルド」
「ロムネ、かぁ……」
 スターフィルは、手といえるのか分からない部分を持つロムネの手を見ながらそう呟く。少しして顔を上げ、ロムネの顔を見た。
「うん、いい名前だね! こちらこそよろしく。じゃあ、早速君の家に連れて行ってくれないかな? いろいろ話したいこと、まだたくさんあるんだ」
 その言葉に、ロムネは笑顔で頷いた。



第3然へつづく。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ