610短編
□一生互いを想い合う。
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戦闘で魔物を倒す時、よく魔物を怯ませる為にいろいろな所を切りつける。
今日はちょっとエグいやり方だけど足を切って動きを封じ、止めを刺した魔物もいる。
それを思い出しゼロスはふと思った事を口にする。
「もし俺さまの足が無くなったらロイド君、肩貸して俺さまと旅続けてくれる?」
「は?」
いきなりの課題にポカンとするロイド。
いいから答えろよ、と訴えればロイドは当然の様に口にした。
「そんなの、続けられないに決まってんだろ?」
まぁ、そうだろうな。
当然の事だとゼロスは頷いた。
「俺さまとは、な」
「どういう意味だよ」
「さぁ?」
クツクツと喉を鳴らし笑ってみせればロイドは呆れた顔で溜め息をついた。
「あのな。俺はゼロスが心配だから止めるんだ。それくらい分かってんだろ?足が無い身体じゃ旅なんて出来ないしな。」
「イコール、足手まといになるから、だろ?」
「何でお前はマイナスにしか考えられないんだよ。」
俺さまの発言が気に食わないのかムッとロイドの眉が寄る。
「確かに、足手まといになるのは事実だけど、でも俺は大切な人をそんな状態で危険にさらしたくない。」
「…泣かせること言ってくれるねぇ」
ロイドの使命はエクスフィア捜し。その為には世界中を回らなくてはならない。
旅は危険だ。油断をすれば命取り。
命の危険性がある中で、もし足が無かったら、旅を出来ないのは当然。
でも体の一部が無くなるだけでロイド君に着いていくことが出来ないなんて、人間の身体はなんて不便なんだろう。
「大丈夫だよ。旅が出来ない体になんかさせない。俺が守るから」
「…綺麗事ばっかり言ってムカつく。」
もし魔物が俺の足を狙ったて、ロイドが気付いたとしても守れる確率は100%じゃないのに。
「そうだよな。」
それをロイドは分かっていて言ってるんだから更にムカつく。
「でも俺は自分に出来る事をしたい。言葉だけでもいいんだ。」
「…守れなかったら、後悔するのに」
「それでもいいよ。お前を守れない俺なんて、一生後悔すればいい。」
それだけ俺はゼロスが大切だから。
さらっと自分にとって当然の事を言うロイドは見ていて恥ずかしい奴だ。
「あー、もう、惚れさせること言ってくれるねハニー。」
「もう惚れてるだろ?」
「でっひゃっひゃっひゃ!ハニーったら自惚れ屋さん。」
そしてそんなバカの言葉に納得してしまう俺はアホなくらいロイドに惚れてるんだと思う。
要は、ロイドも俺も恥ずかしいくらいお互い大好きなんだ。
「仕方がないから自惚れたバカなロイド君は俺さまが守ってやるよ」
「なんでそうなるんだよ。」
「いいでないの。俺さまばっかりハニーに守られたら不公平だし?俺さまだって強いんだぜ?」
「はいはい。期待してるよ」
互いに守り合うという言葉だけの約束。
もしも本当にロイドの足が無くなったら俺も守れなかった事を後悔するだろう。
死ぬほど後悔して尚旅する方と、足手まといだからと捨てられた方。
どちらも辛いけれど、互いを想って生きることになる。
ずっと、死ぬまで想い続ける。
どんな形にしても互いを想い合うのは素敵なこと。
「一生、守り続けてやるよ。」
「じゃあ俺も。約束な」
約束。
一生、守り続ける約束。
守れなかったら一生後悔する。
どっち道、一生互いを想い合う。
ロイドにとっては当然の事だろうが俺にとっては凄く幸せな事なんだ。
幸せな気持ちで俺はロイドに微笑を浮かべた。
end