610短編

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人を好きになることはとても幸せで。
人を好きになることはとても切なくて。
人を嫌いになることよりもずっと複雑で。

でも一番難しいのは、愛されることだ。
愛している人に愛された時。
きっと初めて、幸せの意味を知るんだろう。

俺はその世界を見てみたい。
どんなに夢見ても届かない幻の向こう側。
きっとそんな世界も存在すると信じて。
それが未来に繋がると信じて。
手を伸ばした時に触れられるのが君であってほしい。

信じることは簡単だ。
複雑そうに見えて、実際は愛があれば嫌でも信じてしまうのだから。
君が笑っていてくれればそれで良いだなんて戯れ言を本気で呟きながら、結局俺は君を何より求めてる。
命を天秤に賭けられないままに、命より君が大事だとほざきながら。

泣けば済むと思ってる。
泣けば済むと信じてるから。
泣くしか出来ない。泣くことで訴える。
でも届かない。
幻はいつまでも幻のまま消えない。
それでもまだ信じる。
君が、信じることを歌ったあの日から。
俺はいつまでも信じ続けてる。
 
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