桜色小町
□桜の少女
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「いらっしゃい…って、小町やないの!」
「女将はんまでうちん事小町呼ぶ〜。うちそないに美人やあらへんしっ」
「へぇへ。堪忍、お恵ちゃん」
女将はくすくす笑いながら、いつものやでと言って蜜豆を小町――お恵に差し出した。
“小町”は、あだ名である。
小町の本名は、藤本恵(フジモトケイ)と言う。
町では噂の美人の為、皆から美人の意味をもつ“小町”と呼ばれていた。
また、家は名字帯刀御免の立派な商家であった。
「ん!此処の蜜豆は一等美味しいわぁ」
「ほんま?嬉しわぁ。お恵ちゃんって、今年でいくつになるん?」
「十三」
「そうか、もうそないな歳なんやね。ほんなら、ちゃんと行儀改めなあかんね」
ブホッ!
恵は思いきり茶を吹いた。
「何よ女将はん。行儀なんか覚えたないし!」
「せやかて何時かはお嫁はんになるやん。悪戯ばかりしてたらあきまへんえ?」
恵は反論出来ず、黙ってしまった。
(まぁ、そうやけど…)
しょんぼりした恵を見て、女将は笑って告げた。
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