桜色小町

□桜の簪
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「お母はん、祇園の方にお芝居見に行ってきてもええ?」
「あら、今日からやったん?」
「せやで!これを見逃す訳にはいかんやろ?せやから、お小遣い頂戴!」


恵は家の玄関に居た。
いつもよりも華やかに着飾り、すっかり美しくなっている。

芝居を見に行く気満タンだ。

母は恵のお小遣いねだりを聞いた瞬間、扇子で一発恵の頭を叩いた。


「いった!髪型崩れるやんっ」
「阿呆ぬかし!一昨日お小遣いあげたばっかやろ!あれはどしたん!?」
「お嫁行くまで貯めるねん」
「せやったら、それ使うたらええんのとちゃう?」
「遊ぶお金とはちゃうねん♪」


にっこり笑う恵があまりにも愛らしく、母は思わず小遣いをあげたくなったが、鬼の顔をしてあげなかった。


「どうせあんたなんかがお嫁行けるわけあらへんし、貯金を上手くやりくりしぃ!」
「酷い…。くすん」


この勝負、母の勝ちであった。
恵は泣く泣く、貯金から幾らかを持っていった。


「母はんのいけず…。行ってきます」


恵は下駄を履き、一人で祇園へと向かった。
その足取りは、決して軽くはなかった…。













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