桜色小町

□桜の記憶
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「お恵さん…大丈夫?」
「なんとか…。はぁ」


恵と弘之介は全力疾走し、疲れていた。
特に恵は、先行く弘之介に道案内をしながら走ったので、息切れしていた。


「ごめんなさい、走らせてしまって…」
「……喋られへん」


弘之介は懸命に謝るも、恵はそれに応えられる程の体力はなかった。

すると、聞き馴れた声が耳に入ってきた。


「恵、どしたん!?…って、このお方誰!?」

「…母上…」


そう、現れたのは恵の母であった。
恵は予想外の母の登場に脱力しながらも、頼れる人間が現れた安心が込み上げてきたのか、母に倒れ込んだ。


「恵!?」
「走り…疲れてしもたわ。この方…匿っといてな…」


そう言うと、恵は眠りについてしまった。


「…」
「…」


母と弘之介の間に流れる沈黙。
しびれを切らしたのか、母は弘之介に話しかけた。


「貴方は、どちら様どすか?」
「加藤…弘之介と申しまする」
「弘之介はん、恵こっちに運んで!うちはお茶運んで来るし!」


母はそうとだけ告げると、走って家に駆け込んだ。


「…しょうがないなぁ」


弘之介は恵を抱えて、家に入った。




















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