桜色小町

□桜の乱舞
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「やっと着いた…!」


江戸を出立してから、幾日経ったことだろう。
弘之介は京に到着した。


「また三年前のような不祥事は起こさないでくださいよ」
「解っている」


供の注意を軽く聞き流すと、弘之介は歩き出した。


「早う屋敷へ行こうではないか。旅疲れを癒したい」
「そうですな、弘之介様」


二人は自らの住む屋敷へと向かった。

ー…ふと、見慣れた茶屋を見つける。
そこは、恵と自らがかつてお茶した店であった。


「懐かしいな…」


弘之介は優しい笑みで茶屋を見ると、足早にその場を去った。




















「はぁ…今日は自由だ!」


弘之介は屋敷に荷物を置いた後、祇園へやってきていた。
目的は、恵の住む家へ行くことだ。
弘之介は記憶を頼りに、恵の家へと向かう。


(あ、ここらへんだな)


懐かしい路地が、見えた。
此処に恵の家がある。
歩いていくと、恵の家があった。


(あった…!)


三年前とちっとも変わっておらず、弘之介は思わず顔が緩んだ。
しかし、何故か昔のような活気は無い。
弘之介は気になり、家を覗き込んだ。
すると。


「あ、あんたはん…!もしかして弘之介はん!?」

「…お恵さんの母上殿!」


三年前より少しだけ老けた、恵の母が現れた。
母は弘之介を見るやいなや、突然土下座した。


「ど、どうされたのですか!?」
「弘之介はん、後生どす!恵を助けとおくれやす!!」






















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