LIAR

□persona
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まだ星の子学園にいた頃。

遊戯の時間に大人の目を盗んで、施設内の教会の礼拝堂で何時間も過ごすことがあった。

自分が間もなく姉と引き離されて財閥の屋敷に引き取られることや、遠い国へ一人で送られることを理解していたから、幼いなりに不確かな何かに縋りたかったのだと思う。


ある日、歌を聞いた。

それは忘れられない記憶。
聖歌隊が歌う祈りの歌。
アカペラの澄んだ美声が幾重にも重なる、不思議な音楽。

外国語は分からなかったが、その歌が自分に与えたものは、美しいものに対する純粋な感動。
そして、刺すような胸の痛み。

 
しめやかにミサが行われる礼拝堂の一番後ろの席にぽつんと一人座っていた俺に、見習い神父の青年が、なぜ泣いているのと尋ねてきた。

小さい俺は、理解するより感じていたのだろう。
その歌に、込められた意味を。
その想いを。
どうしようもなく苦しくて、ただひたすら救いを求めるひたむきな願い。

その願いに、祈りに・・・あの時の俺は何を映し見ていたのだろう。




耳に残る綺麗な旋律


心に焼きついたゴスペル(福音)


あの天上の音楽が、幾年月も経て――今もなお鮮明に甦る
 
 
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