婆沙羅の歌声

□届け、想い。
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月の綺麗な夜、小十郎は一人酒を飲みながら、月を眺めていた。

自分の主は珍しくいない。
先程溜まっていた実務が終わり、何時もより早く床に就いたのだ。

小十郎は月を観ながら考え事していた。

未だ、己の主にすら告げていないこの想い。




「……真田幸村……。」



ぽつりと呟いた彼女の名前。

先日の戦で初めて顔を会わせた、彼女は自分の主の好敵手になった。

紅い服、白い肌、細い腰、豊満な胸、綺麗な手足。

彼女の姿が頭に浮かぶ。







「………何、考えてんだ俺は……。」

小十郎は邪念を振り切るように酒を煽った。


自分よりかなり年下の少女の事ばかり考えてしまうなんて、敵の兵士、そして主の好敵手だ。



小十郎は胸の高鳴りを押さえるために、顔の赤さを誤魔化すために、また徳利に手を伸ばした。






 

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