銀魂夢小説8(全部高杉)

□ふぇろもん
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散々色気があるとかいわれている高杉晋助だが。
私の意見を言わせて貰うならば、そいつは違う。


「晋助」

「あんだよ」

「風呂に入れ」

「…おめぇ、ボケたか?」

「は?意味がわかんないんだけど」

「風呂なら昨日は入っただろォが」

「あんた馬鹿?」



そう、この男…お風呂が大嫌いなのだ。
きっとみんなは知らないだろう、知るはずも無い話。
だけど何だかんだ長い付き合いの私の目などごまかせるわけが無い。
色気だフェロモンだと言われる事にいつしか心地よさを感じ始めたこの馬鹿助は、どうやら。
「こいつは使える」と思ったらしく、昔から嫌いだった風呂に更に入らなくなった。



ほっておけば夏でも1週間なんて当たり前。


最低だ最悪だ。
だから私がこいつの尻を引っぱたき、時には甘い話を持ちかけ(一緒に入ろう等)何とか毎日入れている。
だが…しかし、一筋縄じゃ行かないのがこの男。
日々押し問答を繰り返し、しぶしぶ承諾させるまでが長い。
果てしなく長い。



「だから、晋助。お風呂は毎日入らないと…」

「うっせぇな、風呂なんざ入らなくても死にゃしねぇだろ」

「死ぬよ、こっちが死ぬよ」

「ああ?」

「あんたさ、提督なんだから…身だしなみってのは大事だよ?」

「身だしなみならきちんとしてんじゃねぇか」

「ダルダルな着流しの男がよく言うよ」

「…俺なりの、おしゃれだ」

「銀ちゃんのほうが清潔感があるよね」

「あんだと?」

「ヅラとか、あのサラサラ長髪って毎日トリートメントかかさないんだろうな」

「…」

「それに比べてあんたは…はぁ」

「…何だよ」

「あんたってさ、テロリストだよね?」

「…あぁ」

「ぷ…その体臭がテロ?臭さで世界崩壊させる気?ウケるんですけど」



私が笑うと、相手はムッとした顔で自分の体をクンクンしていた。
意外な行動だ。でも昨日もちゃんと風呂に入れたから臭わないだろう。
着流しだって洗いたてを渡したし。
でも、こちらとしてはそれを継続させたいのだ。
いよいよ臭ってくる前に何とかしたい。臭い高杉晋助、なんてちょっとどうかと思う。
触りたくないくらい、側に近寄れないくらい臭い男になられたら困る。


その為に、毎日風呂に入る事を習慣づけさせたい。



私だっていつまでも晋助と居られるとは限らない。
「この人って私が居ないと駄目なのだ」とは思わないけれど、しかし。
こうして彼に対等にモノがいえる人間は少ない。
もし私が居なくなり、晋助がずっと風呂に入らない状態で存在していたら。
鬼兵隊の人たちは相手が相手だけに何も言えないだろう。


どんなに臭くなっても。



「晋助、体カイカイになっちゃうよ」

「大げさな…一日二日で。戦争中は風呂なんざ入れねぇのが当たり前だぜ」

「今は戦争が終わった時代だよ。風呂に入るのが当たり前なの」

「おめぇの物差しで俺を計るんじゃねぇよ」

「分かった、じゃ言おう。臭いんだよ馬鹿助」

「…くさ…」

「分かる?女の子は臭いに敏感なの。好きな男が臭うのはいただけない、だから言うの」

「女の子って、おめぇが?おめぇが女の子?」

「突っ込みどころ違う!!!その前後の文章もちゃんと理解して!!!」




さてここからが正念場。
一体今日はどんな言葉でこいつを風呂場に行かせるか…。
毎度こんなことを考えねばならないなんて、本当に嫌になる。
だけども言わなければもっと恐ろしい状態が出来上がるのだから仕方ない。
私が言わなければ誰も言えない。
恐らく万斉さんなら可能だろうが…彼の場合、気を使って言わなそうだし。



「ほれ晋助、風呂だ風呂」

「面倒くせぇ、いいじゃねぇかよ別に。俺個人の問題だろォが」

「私は風呂に入らない男とは寝ないからね」

「…」

「昨日だってその…お風呂の後にシタじゃん」

「…あぁ、つまり今日も俺とやりてぇから風呂に入れt」

「違う!!」

「そんなでけぇ声で否定しねぇでもいいじゃねぇかよ…」



やばい、すねさせてしまった。
だってあからさまにそんなこと言うから、つい。
これじゃ逆効果、こうなってしまうと晋助は扱いづらい。
持ち上げておだてなくちゃ駄目なのに、私の馬鹿。
けどねぇ…私の気持ちってのも少しは理解して欲しい。

世の女性諸君なら分かるだろう?
洗っても居ないイチモツなんて体に埋め込まれたら、病気になってしまいそうじゃないか。
私だって晋助とするのが嫌なわけじゃない。
だけど…やっぱりそこは、「そこ」は洗った後にご使用願いたいわけで…。
つまりは今日もそういうことになるだろうから、複線というか…。
ともかく…股間は洗ってからにしてくれ、という事だ。


「ごめん、晋助…そういうわけじゃないんだよー」

「…」

「ほら、でもやっぱり体は清潔な方がいいしさ」

「うっせぇな、汚ぇ男は嫌いなんだろ?」

「そんな事一言も言って無いじゃん。ただお風呂に入って、ってだけ」

「…」

「体を清めてから…ね?」

「おめぇはよ」

「…ん?」

「おめぇは何もわかってねぇな」

「は?」

「俺ァ風呂が嫌いなんじゃねぇんだよ」

「…え?そうなの?」

「あぁ、どっちかってぇと風呂は好きなほうなんだぜ?」

「じゃ何で?」



突然のカミングアウトに私は戸惑う。
散々風呂嫌いだと思っていた彼なのに、実は違うなんて…なんだソレ。
もしかして口からでまかせってやつか?いやはたまた別の理由?
こちらがぽかんとしていると、晋助はククっと笑い…それからこう言う。
ニヒルに下から舐めるような、いやらしい目線で。




「臭いんじゃねぇ、こいつは俺の…フェロモンさ」

「…」






それ、思い切った言い訳じゃねぇかよ。





無論そんな言葉など私に通じるわけも無く。
こちらがあまりの発言に返す返事も見つけられず、呆れた挙句に無表情で。
「晋助、ちゃんと洗わないとチンコって腐るんだよ?これ本当だから」と脅すと。
彼はその日から、なんと毎日お風呂に入るようになったのだった…。







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