銀魂夢小説6(大体高杉)

□深淵
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「何考えてんだ?」

「何も」

「んだよ…」

「だから何も考えてないよ」

「…」

「あっ…ちょっと、痛い」

「嘘つけ…感じてんだろ?」

「違うね、防衛本能でしょ」



女ってのはセックスの最中に別の事が考えられる。
今、私の陰部には間違いなく晋助のペニスが突き刺さっていて。
それが抜き差しされる度に快楽が駆け抜けているはずなのに。
頭が妙に冷めていて、この行為に没頭出来ていない。



「ヤラせろよ」

晋助が私の家に来る用件はそれ以外に何も無い。
ヤルなら他を当たってください、と言っても聞く訳が無い。
そういう男だと私は知っているし半ば諦めてもいる。
だから何も言わずに家に上げ、いつ来てもいいように買い置きしていある避妊具を渡す。
その前にお茶でも、なんて言いつつそれを用意をしながら…畳に座っている相手を眺めた。


テロリストで過激で危険な男、幕府から追われている男。
そんな男は時折こうやって私の元に来る。
突然現われては消えていくのだ、用件だけを満たして…つまり私を抱いて。



この関係はいつからだったか…馴れ合い具合を考えると随分経つのは分かっている。
出会いも、初めて体を重ねた日も忘れたが…その流れの中で覚えているものもある。
面倒なのは嫌なんだ、と互いに意見が一致して今の状態が続いているということ。
お茶を一口だけ飲んだ晋助が性急に私を求めるのもいつものこと。
あぁ…もしも彼が恋人だったら、幸せなのかそれとも辛いのか…どっちだろうね。



体の相性は悪くない、それは互いに感じている。
だから今も続いているのだ。
殺されないところを考えると…もしかしたら彼は私を気に入ってくれているのかもしれない。
不定期ではあるけれど、計算すれば月に1回は体を重ねている事になるし…。
とにかく私は、テロリストで狂気に溢れすぐに抜刀するような男の側に居ても殺されずに居る。
あまつさえそんな男にこうして抱かれることが出来て、きっと彼は私に心を許している。
自意識過剰でもそう考えねば辛いのだ…本当は。
冷めた顔をして冷めた口調で、何も感じていないフリをしていても。
いつからだろうか、こんな感情が出てきたのは。



「なぁ…何、考えてんだよ?」

「だから何も…」

「集中しろよ、俺に…」

「してますよ」

「…」



行為の途中だというのに晋助はそれを止めて私の隣に寝転んだ。
それからため息をついて、じっと私を見つめる。


「何?晋助…」

「それは俺の台詞だろォが」

「しつこいね、面倒なのは嫌いなんでしょ?だったら何も気にしなければいいじゃない」

「んな顔されたら気になるだろうが」

「別に…私は晋助の彼女でも何でも無いんだから。
あんたはそう言うのを考えずに自分勝手にヤルだけヤッて帰る、って方が似合ってるよ?」

「…」

「元々そう言う関係でしょ?」

「あぁ…」

「それが高杉晋助って男でしょ?」

「…そうだな」

「テロリストで狂気で…危険で、邪魔する奴は誰であろうと殺す…そんな人でしょ?あんたは」

「あぁそうだ」

「だったら、そう在れば良い。人の…ましてや私の事を気にするなんて、似合わない」

「…そうか」



少しうつむいた晋助の顔は丹精に整っていて綺麗だった。
ああ…また言いたくない事を言ってしまったな、と私もうつむく。
可愛げも無く突き放すように。
ふざけんなと彼が憤怒し殺されてしまっても文句は言えない。
しかし晋助はとても静かにもう一度私に目線を合わせた。
そうして私の髪の毛をいじりながら、呟く。


「なぁ…もしも、狂気で危険で過激と言われている俺が…だ」

「…ん?」

「もしも…テロリストで悪人の俺が、高杉晋助が」

「うん、何?」

「お前を愛している、なんて…らしくもねぇ事を言ったらどうする?」

「…え?」

「本当は…お前を連れて行きたくて仕方ねぇとか、そんな事言ったらどうする?」

「…晋助?」

「本当はお前にずっと側にいて欲しいって…そんな事を考えてたら…どうする?」

「…」

「そう言ったら、なぁお前…どうするよ?」


私は彼の手を払いのけて、そのまま彼の胸の上に馬乗りになって首をしめてやった。
それから罵って罵倒する。


「最低だね、晋助…あんたはそんな面倒な男じゃないと思ってた」

「…すまねぇ」

「何謝ってるの?テロリストなら…人殺しなら、奪えばいいじゃない」

「…」

「私はね、晋助…私はね…」



はたと、涙がこぼれて…彼の胸板にポツポツと跡を残す。
それをあるまじき優しげな視線で見つめられれば、もうお手上げだ。


「あんたが先に面倒な男になったんだから、私も今から面倒な女になってやる。
晋助…足りないよ、私は。あんたのぬくもりが四六時中欲しくてたまらない」



もう一人は嫌だ、もう待っていたくない、側にいたい…言いかけたそれは最後まで伝えられず。
何故なら突如、晋助が噛みつくように私の唇を奪ったから。
もつれるように再び重なり合っていく体が酷く熱かった。
荒々しく私を組み敷いて、まるで殺すかのような視線をぶつけてくる晋助。
けれども「ぶっ殺す」と動きそうな唇は、全く逆の言葉を吐き出した。


「愛してんだ、お前のこと」



ああ…きっと今からは何も考えられない。
たぶんもう二度と離れることが出来ない。


私は深く溺れていく、どこまでも沈んでいく…この男に。







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