緋色に導かれて(再筆)

□何でもない風景
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「…なんでこうなるのよ。」



蛍は溜め息を吐いた。
心なしかその顔はうんざりとしている。

その傍らには、



「いいじゃないですか♪」

「嫌よ。何の目的もなしにひたすら時間を潰すなんて。」



宗次郎の姿があった。


夜通しでの番の仕事が終わった蛍。
昼を過ぎ帰宅に向かっていた最中、何の因果か彼に出会したのである。

件の役目で連絡事項か何かか、と話を聴いていたが何処かおかしい。
今までの冷静さはいざ知らず、嬉々としたように蛍に食いつく宗次郎。


そして、あれよあれよという間に、彼の暇に付き合わされようとしているのである…




「じゃあ…」



その言葉に蛍は全神経を傾ける。
よし、観念したか…と思いきや。




「僕、蛍さんと行きたいところがあるんです。付き合ってください。…これならいいでしょ?」

「…は?」

「目的、ありますよね?」



にっこりと微笑んだ。


…変わってる子だとは思っていた。
実際何を考えているのか、全くさっぱりわからない。



蛍さんは何が好きなんですか?
え?どうでもいい?考えるだけ無駄?
じゃあ、蛍さんは甘いものとかは好きですか?
僕は餡蜜とお団子が大好きです。
ああ、甘いものあまり好きじゃないんですか?
なら抹茶がおすすめですよ。
今度甘味処巡りに行きましょうね♪


…何、この子。



「…あなたね。」

「?」

「楽しい?」

「ええ、とっても。」

「…」



一層、笑顔が増した気がした。



「言いましたよね?初めてお会いした時に。蛍さんに興味あるって。」

「どこから突っ込めばいいわけ?」

「だから蛍さんのこと、もっと知りたいんです。」




──なんと返せばいいのだろう。



「えーと…聞こえてるかしら。私に関わるだけ無駄よ。」

「そんなこと言ったって僕の気持ちは変わらないです。」

「だいたい…どうして興味あるわけ?あなた不思議過ぎるわよ。」

「強くて綺麗だからです。」

「あら、ありがと。」

「蛍さんも教えてくださいよ。」



期待しているような口ぶり。
笑顔なりにも、言葉に見合った表情をしているような気がしなくもない。



「…私がいつ、どこで、あなたに興味あるって言ったのよ?」

「え?興味ありません?」



その声は全くと言っていいほど、落胆の色がなかった。
否定したにも関わらず、促すように真っ直ぐな瞳を蛍に向け続ける。



「……強いて言えば、笑顔で鉄仮面なところが奇妙で気になるわね。」

「そんなに僕の笑顔が好きなんですか?」

「都合いい風にしか人の話聞かないでしょあんた。」



呆れる蛍の腕を掴み、じゃあ行きましょう♪と心なしか嬉しそうに微笑む宗次郎。
蛍は為す術がなかった。




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