□こんにちは怪獣〜桐江くんの恋〜
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それは俺が中坊だった頃。
まあ一般的には不良と呼ばれる部類の学生だった。
その日もダチとバイク乗って、コンビニの前でたむろしてて酒呑んで、煙草吸ってた。
周りの迷惑なんて全く考えてないようなガキだったわけだ。
周りが俺をどう評価しようとも今が楽しければ良かった。
今日は先公がどうだった、
あいつ喧嘩して入院だってさ、やらなんやら会話してる時だ、
「ここに停めちゃダメなんだぞ−!」
顔を上げると小学生?
いや学ランを着ているからギリギリ中学生か?が立っていた。
「ガキがこんな時間に何してんだよ、さっさと帰って糞して寝な。」
隣にいたダチがケタケタ笑いながらそのガキの肩を掴んだ…
と思ったら飛んでいった。
そうまさに飛んでいったのだ。
ゴミ置き場に倒れたダチはピクリともしない。
「俺はガキじゃないぞ!中学生だからな!」
そう言いながら今度は俺に向き直る。
ダチがやられたのに何故だか怒りは湧いてこない。
それ以上にこのガキに興味がわいた。
かっ開いた目は髪と同じ亜麻色で、眉はぶっとい。
「なあ、中学生。」
「何だ不良!」
「お前どうやってアイツ投げた?」
「投げたから投げたんだ!」
どうやらこの中学生馬鹿らしい。
乾いた笑いが出てきて段々と可笑しくなって爆笑にかわった。
「なあ不良!ここは車が入る所だぞ!だから停めちゃダメなんだぞ!退けろよ!」
「はははっ、嫌だって言ったら?俺も投げんの?」
「うーん…投げない!…けど、こうする!」
ドゴッ
近くから凄まじい音がした。
「お、まっ…はあ!?」
「お前がやらないなら俺が退かすか壊すまでだ!ガオー!」
そう言って思い切りバイクをはったおしていく中学生。
そして倒したバイクを踏んづけた。
またも凄まじい音を出して壊れていく。
あまりにも有り得ない光景に目が離せない。言葉も発せられない。
踏む度にガオーガオーとふざけた奇声を上げている中学生は、気が済んだのか
ふ、とこっちを向いて、
「もうしちゃダメなんだぞ!」
と走り出した。




その走り去っていった
嵐というよりも怪獣の襲来に急に体が熱くなって、胸が動悸ではちきれそうになった。
どうやらあの突然現れた怪獣に惚れてしまったらしい。
バイクじゃなくて俺が壊れちまったのか!
嗚呼あわよくばまた俺と怪獣を逢わせてくれウルトラマン!



暫くぼんやりとしてからダチを回収して帰ることにした。
壊れたバイクは知らん。

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