□白雪君と木村君
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木村君と白雪君は恋人というやつである。
といってもケンカばっかりで愛を囁いている場面なんて誰も見たことがない。
ホントに付き合っているのか??なんて
周りが心配するのも仕方ないくらいなのだ。
そんなこんなで本日もお日柄良くケンカしている二人の話である・・・



「木村君、木村君!」
教室の窓の桟に座って木村君がタバコを吸っていると、
最近Fの頭になった翠斗が声を掛けてきた。
相手は友好的なので面倒ながらも返事をする木村君。
「何だよ翠斗。」
若干不機嫌な感じだが、木村君にとっては普通である。
「あんさーコレ着けてよ。」
そんなことなど関係無いとばかりに突きつけてきた件の“これ”。
翠斗が取り出したのは青縁の眼鏡であった。
するとちょっと目を見開いて驚きを露にする木村君。
手渡されマジマジと見つめるとやはり・・・
「・・・白雪の、眼鏡?」
何で?とその眼鏡を手にとったまま翠斗を見る。
「えー、ちょっとね!」
まあいいじゃん!眼鏡!似合うよ!
と着けるように促す翠斗。
「でもよ・・・、」
「いーからいーから!・・・ほれ!」
「うわっ、」
あまりに行動に起こさない木村君に焦れたのか、
木村君の持っていた眼鏡を奪い、無理やり掛けさせる。
無理やりだったのでちょっと耳のとこからずれてしまったが翠斗は満足したように
ニヤニヤ笑っている。
あー嫌な笑顔だな、俯いきながら思いつつちゃんと眼鏡を掛けなおす。
あんまり度が入っていないようで、
そんなに違和感はなかった。
「おお可愛い!なあ?白雪!」
「はあ!?」
ばっ、と顔をあげる。
すると翠斗の後には眼鏡の持ち主の白雪君の姿。
目を見張って木村君を凝視している。
その目が何だか気恥ずかしくって
「っ、てめえ何見てんだよ!」
なんて可愛げのない言葉が出てくる。
そんな木村君にはっ、と我に帰ったように、
「はぁ?見てねえし!自意識過剰なんだよばぁか!
似合わねえんだから、さっさと返しやがれ!」
とこれまた暴言を吐く白雪君。
言われた木村君もカッとなるのは最早条件反射のようなもので、
「うっせぇ!返しゃいいんだろ!?クソ眼鏡野郎!」
がっしゃん、と眼鏡を床に叩きつけ、
「胸糞悪ぃ!帰る!」
と教室を走って出て行く。
勿論、白雪君の肩に思いっきり肩をぶつけて。










「あーあ、行っちゃったー、どうすんだよ。」
「・・・・俺も帰る。」
「そうしろよ・・・ほい眼鏡。」
「ん・・、」
「んじゃぁ、また明日!同室者によろしこ!」
「ああ、」
「・・・・・・・・・・・・面倒なカップルだなぁ、まあ可愛いけどなー。」
走り去って行く白雪君の背を見つめて、一人呟く翠斗の姿があったそうな。
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