□私立春川学園!
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少し俺の昔話をしようと思う。

俺と葉軒彩芽という奴は幼なじみだ。
元々親同士が仲が良く、
子供が産まれたら結婚させよう!と話すくらいには仲が良かった。
といっても俺も彩芽も男だったからそういうのは無理な話だ。
まあ俺はゲイだがら別にしても良かったんだけどな。


そんな幼なじみである彩芽と同じ学園に入ることになるのも当たり前なわけだ。

幼等部、初等部…そして中等部。
しかし中等部に入ってから、彩芽は学園に姿を現さなくなった。
これを心配したのは彩芽の両親と俺の両親で、
探して来いとのお達しが俺にきたのだ。
歳をとる毎に幼なじみなど疎遠になるもので…
暫くは交流なんて無かった。
そういう理由もあったし、俺はFであいつはAなんていうクラス分けのせいもあるだろうが。
探す気なんか無かった。
いなくなったならそれなりの理由があるのだろう。
関係ない。
……それでも見つけてしまったのは偶然なのだ。




授業をエスケープなんて当たり前。
今日も俺は外を一人でふらふらしながらタバコを吸っていた。
ふらりふらり、正にそんな表現に似合うくらい、無意識に歩いていた。
気づけば学園内の森の中。
無意識なのだから帰り道は分からない。
ああ、困った。
そう思いながらも足は止まらない。
ひたすらまっすぐ歩く。
すると急に開けた場所があって、
「何だ、これ…?」
ガラス張りの建物。
近づいて覗いて見る。
緑や赤や黄色などの色が見えて、
どうやら温室のようだった。
俺も人並みに好奇心があったようで扉を開ける。
ふわりと香る植物の香り。
暫く佇んでいると、
「誰だ?」
低い、しかし空間に響く声が聞こえてきた。
聞こえた方へ顔を向ける。
「あ?」
「……将太?」
煌く白金の艶やかな、
けれどざんばらに所々切られた長い髪が僅かな風邪でなびく。
目元と口元の黒子にも右目にある眼帯にも、
あまりにも美しい姿にも、
俺は見覚えがあった。
「彩、芽か?」
そう、彼こそが、探していた…
葉軒彩芽であった。
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