□私立春川学園!
1ページ/2ページ

「海まだかねー。」
ジュース買うのに時間掛かりすぎー、
と昼飯代わりのケーキを頬張る翠斗。
昼休みに入って翠斗のファンが持ってきたのだ。
顔はいい翠斗。いつの間にかファンができた。
お坊ちゃんもこんな所怖いだろうによく来たものだ。
その貰ったケーキを大口をあけて咀嚼し、
その度に口の端にクリームが着いているが、
気がついてないようだ。
最初のほうは俺が舐めとっていたのだが、今はそれは出来ない。
なぜなら・・・
「ケーキはやっぱホールだって皆よく分かってるよなー!うん俺は嬉しい!旨い!」
もぐもぐ
こいつは2個目のホールケーキに取り掛かっている。
つまり舐める量が少々多い。
甘い物をあまり食べない俺には流石に無理だ。
今では食っている姿を見るだけでも胸焼けがしてしまう。
「誰か友達にでも会ったんじゃねぇの?」
「うーん、だと良いけどさあ。」
あいつ可愛いから心配、ともう一口。
まだケーキは半分残っている。
こくん、と喉をならして飲み込んでから、
もう一度ケーキにフォークを差し込んだところで扉が開いた。
「翠ちゃんただい、」
「お前が海斗を独り占めするやつだな!」
「ん?」
「お?」
海斗の言葉を遮って入ってきた黒もじゃ。
その後からは銀髪に黒メッシュの・・・南雲?と爽やか系の男。
海斗は疲れた顔をしていて、だいたい何があったのか想像がつく。
「お前誰よ?」
アイコンタクトを取っていると、翠斗が黒もじゃに話しかけた。
なんだか嫌な予感しかしない。
海斗も感じ取ったのかあわあわしている。
「俺は辻田良だぞ!お前は何ていうんだ!?」
ビッシィと効果音が着きそうなほどの勢いで指を指す黒もじゃ。
ケーキを突く手を休めて少し考えるような仕草をする翠斗。
2、3秒黙り、
「山本権兵衛でござる。」
「そうか!権兵衛か!」
至って真面目に、まあ内心遊んでいるんだろうが答える翠斗に真面目に真に受ける黒もじゃ。
「・・・あほだなアイツ。」
ぼそりと小さく呟いた翠斗は性質が悪い。
乾いた笑みが出てきて、隠すようにタバコに火を点ける。
「おい権兵衛!お前海斗とどんな関係なんだよ!」
「ああ?双子だけど?」
「「双子ぉ!?」
「双子なのか・・・。」
声をそろえて驚いたのは黒もじゃと爽やか。
ぽつりと呟いたのは南雲だ。
「に、似てない!お前嘘ついてるだろ!」
ぎゃあぎゃあ言いながら、元から散らばっていた机を押しのけて翠斗の所までやってくる。
目の前に来た黒もじゃを若干面倒臭そうに眺めながら翠斗はもう一口ケーキを食べる。
意外と黒もじゃは面白くなかったらしい。
「まじだって、ちゃんと血繋がってるし・・・つか似てないとか海の前で言うなよなー、あいつそれ嫌いだから。」
紫煙を燻らせながら海斗を再度見ると、
ああ納得。
困ったような顔だったのが、今は眉を上げて頬を膨らませている。
小さく「似て無くないもん。」と呟くのも見え、
元来可愛らしい顔なので、その子どもの様な仕草は様なって不愉快ではない。
黒もじゃはうーうー唸って翠斗を睨みつけている。
翠斗はフォークを口に咥えたままその視線を真正面から受け止めていた。

何秒か経ったころだろうか
ガツンッ、
と突然黒もじゃは翠斗の机を思いっきり拳をおろした。
突然の行動に俺もつい目を見開く。
「やっぱ似てない!だって海斗はあんなに可愛いのに!」
「ああそうね。」
海ってば世界一可愛いもん、とブラコンを発揮する翠斗。
ただし目は若干死んでいる。
「お前嘘ついてるんだろ!」
「はあ?」
「海斗を脅して双子なんて嘘ついてるんだ!最低だぞ!」
「あのよぉ・・・、」
「お前凄い悪いやつだ!」
「だか、」
「そんなんだから友達いないんだ!」
「・・・・、」
本格的に面倒になったのか黙る翠斗。。
生まれつき悪いという目つきも今は人を殺したかのような半目になってしまっている。
取り巻きの爽やかと南雲もそれに気がついたのかヒクリと顔をこ強張らせる。
海斗はやばい、といった顔をして
翠斗を宥めようと近くに来ようとしたが、林と小出が腕を掴んで止めていた。
その際に林は耳元で何かを囁いていて、
海斗もしぶしぶその場に留まった。
恐らく正解。
機嫌の悪い翠斗は見たことないが、やばそうだ。
皆一様に空気を読んで黙って見守っている。
その空気を壊したのは・・・
「お前いつまで黙ってんだ!?シカトは一番ダメなんだぞ!」
黒もじゃである。
「・・・。」
それでも喚いている黒もじゃを完全に無視をしてガジガジフォークを噛んでいる。
その態度に腹が立ったのか、そのまま黒もじゃは右腕を振り上げた。
「あ、」
と誰かが声を出す。
咄嗟に俺は体を動かし、その拳を受け止めようとする。
しかし
「っ、」
頬骨にクリーンヒットする拳。
息を呑む外野。

先ほど机に振り下ろした以上の力で黒もじゃは翠斗を殴りつけた。。
翠斗の咥えていたフォークは床に落ち、滑っていく。
俺は心中焦り、翠斗の顔を覗き込む。
ああ、この顔は・・・っ

「翠ちゃん!!」
「来るな海。」
走り寄ろうとした海斗に一言、静かに言い放った。
たった一言だ。
その一言に込められたものを感じ取ったのか、足を止める海斗。
顔は可哀想なくらいに青褪めてしまっている。
翠斗はというと殴られたままの格好から体勢を元に戻し、
息を荒くした黒もじゃに目線を合わせた。
「お前が悪いんだからな!」
と喚く黒もじゃを無表情で見、
「おい、そこの銀パメッシュ。」
そのまま無視。
そして目線を今度は南雲に移す。
「俺か・・。」
突然声を掛けられ体を降らす南雲。
「お前以外いねえだろ低脳。」
「っ、」
「おい無視すん、」
「お前はあっちに行け。」
翠斗をこれ以上刺激してはいけないと判断した俺は林達を手招きし、連れて行くよう言う。
爽やかな方もはっ、として黒もじゃを後から羽交い絞めにする。
あいつは空気が読めるのか。
未だぎゃあぎゃあ言うのがやかましくて、
後でどやされそうだが、海斗にも一緒に外に出てもらうことにした。
教室を出る前に何度も青い顔で振り返ってくろのを、目線で促す。
小さく頷いて、黒もじゃ達を引っ張って外に出て行った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ