□私立春川学園!
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未だ小さく喚く声が聞こえていたが、
暫くすると静かになった。
見ていた奴等も口を閉ざして、
今度は何が起こるのかと見守っている。
残った南雲は居心地悪そうに、しかし目線は翠斗と合わせたままにしていた。
少々顔が赤いのは気のせいだろうか。
「フォーク。」
「は?」
「は?じゃねえフォーク、拾え。」
ゾクリとした。恐怖ではなく、これは興奮だ。
今までにないくらいの翠斗の低い声。
鋭い視線。
その声を真正面から受け止めた南雲は、
気のせいでは済ませられないくらいに顔を赤くさせ、ふるりと体を震わせる。
正直言うと羨ましい。

ゆっくりと床に転がっているフォークの元まで歩いていき、しゃがんで拾い上げる。
依然顔は赤いまだ。
手の中でフォークを弄びながら、今度は翠斗の前に歩み寄っていき、
「ほら、」
フォークを差し出した。
それを一瞥してから翠斗は短く息を吐き出す。
「・・・落ちた汚ぇフォークで食えって?」
お前頭大丈夫?と心底蔑んだ目線を南雲に向ける。
その目線にもう一度体を震わせた南雲は熱い息を吐き目には涙を溜めていた。
「・・・洗って、」
「こなくていいよもう。」
「っえ?」
「あーあーあー・・・・なぁんてね!驚いた?」
「「は?」」
「ぜーんぶ冗談!あははごみんね?」
呆然とする俺達をよそに楽しそうに笑う翠斗。
おいさっきの顔も冗談てか?
演技上手すぎだろ。
「さて、と…お姫さまを迎えに行こうかね!」
海は多分食堂に連れてかれたよね〜、とケーキを箱に仕舞いながら呟く。
仕舞い終えた翠斗はくるりと南雲の方を向き、
「あ、お前名前は?俺紫藤翠斗。」
「あ…南雲、南雲春真…、」
「ふーん南雲な…よし!行くぜ、お前も手伝えよな。」
そう言って俺達の肩を軽く叩き、歩き始めた。
その背はいつも以上に楽しそうで、つい俺の気分も高揚しはじめた。
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