プラチナ編
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「つわものどもが夢のあと……か」
もしくは無常とも言う。仏教的な言葉だ。
この俗世にある森羅万象、有象無象は絶え間なく変化している。だから人はいつか死に、物は壊れてしまうのだ。
そんな壊れたこの洋館は、風も光も介入することのないが故に彼等、ゴーストタイプのポケモンにとっては楽園のような場所なのであろう。かつて幸せだった家族の憩いの家が、ゴース達のものとなっているのを見ると、ヒカルは少々心が痛む思いに見舞われる。
「ぼくの友人を笑った連中の正体は掴めた……けど懲らしめるかは微妙かな」
ゲットするわけでもないのに攻撃するのはね、とヒカルは言う。きっと先程のあわ攻撃で拳骨一発くらいの懲らしめにはなっただろう。
「とにかく、少し探検してみるか」
少し怖いが、あの幽霊のことも気になってしまう――自分に言い聞かせるように腰に手を当て呟くと、ラズワルドの頭を撫でた。
「…………あ」
ヒカルは踏み出しかけた足を止める。
「そういえばラズワルド」
頭上にヘリウム入りの疑問符をふわふわ、ふわふわ。フワンテのように浮かべながら小首を傾げる。
「お前泣き虫なのに、お化けは怖くないんだな」
その一言に、ラズワルドはえっへんと爪先立ちで胸を張った。元来のプライドが高いポチャマならではのポーズだ。
くすり、何故が笑みが零れてくる。
「なら、ぼくも頼れて安心だな」
その瞬間、ラズワルドの体が光り始めた。
燦々と太陽のように眩しい光が解けた時、そこにいたのはポッチャマではなかった。
ヒカルはポケットからポケモン図鑑を取り出す。ぴぴぴ、とお馴染みの電子音が奏でられた。
――『ポッタイシ。ペンギンポケモン。どのポッタイシも自分が一番偉いと考えているため、群れを作ることは不可能で、皆一匹でいる。氷の海で獲物を探し、強烈な翼の一撃で仕留める』
大きくなったラズワルドは、またもやえっへんと爪先立ちで胸を張った。
やっぱり変わらないんだなぁと思う反面、モミの言葉を実感する瞬間であった。