プラチナ編
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炭鉱の町・クロガネシティ。
「黒金」の名に相応しく、鉱山の傘下にある石炭の恩恵で栄えた町である。
シンオウのエメルギーの中枢を生み出す――否、掘り起こす場所であり、またもう一つ代表すべきことがあった。
ポケモンジム――クロガネジム。そのジムリーダーは町を代表するかのような人物であった。
ジムリーダー・ヒョウタ。
エキスパートタイプは岩。町そのもののようなタイプを扱う人物だ。
しかも若くもクロガネ炭鉱の作業員達を統べる人物でもあるので、クロガネの住民からはとても慕われている。
ヒカルはポケモンセンターを朝早くから発ったので、クロガネシティに着いたのは大体正午近くと、これからジム戦を行ってもバッチリな時刻であった。
「うーん……。ラズワルド、どうだろうねぇ――――って、あれ?」
クロガネゲートを無事抜け、ポケモンセンターで休む前にジムの外観を目に焼き付けておこうかと、ポッチャマのラズワルドと共に向かったところ、見覚えのある少年がジムの自動ドアの前に立っていた。
知らないはずもない、その癖のある金髪頭。
「お! ヒカルじゃん!」
ヒカルの幼馴染であり、競い高め合うライバルのジュンだった。
ジュンは軽く手を振り上げる。
「なんだ、今頃クロガネかよ。相変わらず遅いなぁ」
「なんだ、もうクロガネかよ。相変わらず早いなぁ」
ぷっ。
二人は久しい感覚に吹き出し合う。
ジュンは感情を爆発させた大笑いで、ヒカルはくつくつと煮えてきた湯のように笑った。
「俺は今さっき挑戦してきたところだけど…………ほら!」
缶ペンケースのような入れ物に、ちょこんと収まったバッジが一つ。
「クロガネジムで勝利した証……コールバッジだぜ!」
「おおっ」
あまりにも早い結果の提示に、鉄面皮のヒカルも感嘆の色を滲ませる。
「いやー、ヒコザルだとかなり苦戦したぜ。死闘の果ての戦利品だ! ジムリーダーでこんだけ強いんだったら、親父はどんだけ強い…………あああっ! な、なんでもないからなっ」
やはりどんなシュチュレーションであろうと、ライバルの前で父親の名前を出すことには抵抗があるようだった。
それよりも、とジュンは話題を変える。
「お前もジムに挑戦しに来たんだよな? ……ヒョウタさんってジムリーダー、作業員の人に呼ばれて炭鉱の方に行っちまったぜ」
「え」
なんというバットタイミング。
つくづく己の運のなさを痛感するヒカルであったが、ここで立ち止まってはいられない。会うだけ会ってみようと、ヒカルは考える。
「じゃあその炭鉱はどこ」
「町の端っこにベルトコンベアがずーっと続いているから、それを辿っていけば行けるぞ」
「分かった、ありがと」
「あーっ! 炭鉱にはポケモンもいるから気をつけろよー!」
ヒカルは赤いマフラーを翻して駆け出した。