プラチナ編
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※ちょっとだけ暴力的に感じる描写があるかもしれません。
ヒョウタとの対戦後、日没までにまだ時間があったのでヒカルは207番道路に向かおうとしていたところだった。
どん、と背中からぶつかられ、「うわあっ」とヒカルは地面へと倒れ込んだ。
「いつつ……、ってヒカルじゃねぇか!」
「あ、ジュン」
誰かと思えばせっかちなジュンであった。ならば急ぎ過ぎて人にぶつかってしまったことも頷ける。
「ん? なんだ、もしかしてお前も207番道路に行こうとしてたのか? だったら無理だぜ。なんでも変な格好をした一団が研究者達を襲った事件が起こったとかで、警察が捜査するからって封鎖されちまってる」
「それは耳寄りな情報だな」
つまりは一旦コトブキシティに戻って、ソノオタウンにへと向かわなければならないようだ。
「って!?」
ジュンはヒカルの腰――正確には腰に付けたラズワルドのモンスターボールを見て声を大にした。
「お前! まだ一匹しかポケモン持ってないのかよ!」
こくりとヒカルは首肯する。
「ああもう! しっかたねぇな!」
そう痺れを切らすと、ジュンは腰に付けたモンスターボールの一つを突き出した。
「207番道路で仕方なくだらけれたトレーナーから貰ったポケモンの一つだよ。甘い香りのする木に蜜を塗って、ポケモンがおびき寄せられるのを粘っていたらしいけど、今回の事件で全部おじゃんになったとかで不貞腐れて、俺に何匹かくれたんだ」
懐からポケモン図鑑を取り出し、モンスターボールに翳すと「はちのこポケモン・ミツハニー」と表示された。
「ミツハニーか……、今日から君を『キノ』と呼ぶ」
「…………つかぬことお伺いしますが、ど、どうしてだ?」
「『木の』ところにいたんだろ? だから『キノ』」
インスピレーションで決めてみたけど、シンプルでいいかなって思ってる――と、ヒカルは言う。
これにはジュンも言い返せずに肩を竦めて溜息を吐いた。対するヒカルはミツハニー改め、キノのモンスターボールを満足げに見つめた。
「俺もさっさとハクタイジムでバッジを手に入れるぞ!」
ささっとスタートダッシュの態勢をとるジュン。
「よしっ、ダッシュ10秒前、9……って数えてられるかっ!」
ノリノリにノリツッコミ。
そしてそのままジュンは走り出してしまい、ヒカルは呆気にとられる。
「じゃあなヒカル、また会うと思うけど!」
「あ……」
またもや置いてけぼりとなってしまった。
どうしようもないので、ヒカルははぁーっと深い溜め息を吐く。
「……仕方ない」
とにもかくにもコトブキシティに向かわなければなるまい。こんなところで燻っていては時間の浪費にしかならない、とポジティヴシンキングにヒカルは歩を進め始めた。