プラチナ編
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ナナカマド博士の勧めにより、とにもかくにもポケモンセンターで休むこととなった。
先を急ぎたいのは山々であったが、あの二人組がまだこのコトブキシティ一帯に潜んでいることを考えると軽率には出られない。……ということで、あまり派手に警護してもらうわけにもいかず(逆に目立っていい的だ)、トレーナーにとっては最も安全と思われるポケモンセンターでの宿泊となった。
そして朝。
野生のムックルが騒ぐ声が寝ぼけまなこのまま、ヒカルは起きた。
雲一つない晴天。
窓際でラズワルドとキノは大きく伸びをしていた。
昨日あの一件がなければ良き陽気の晴天だったのだが、今はそれを素直に受け入れることはできない。食堂で朝食を胃に詰め込んだ後、町を出た。
「ヒカル君、きっとまだ不安だろうけど、気にし過ぎは駄目だよ?」
コウはそう一言声をかけてくれたが、昨日言うことは言ったという背中を見せるナナカマド博士は静かに口を閉じていた。
あえてヒカルはナナカマド博士に尋ねる。
「博士……、今回奪われそうになったオリジナルレポートに記された、『あるポケモン達』とは一体なんですか?」
一番の謎。
危うく怪我を負わされそうになり、可愛がっている助手のコウの腕が折られようとされて尚渡そうとしなかった――シンオウポケモン協会にも、その真実の核は伝えなかった。
あるポケモン――
ポケモンは、世界さえも創ったと言い伝えられる。
「…………」
ナナカマド博士は一向に口を開こうとはしない、ばつの悪い顔をしながら黙祷を捧げるように目を瞑るだけだ。
冷静沈着なはずのヒカルも、流石に堪忍袋の緒を切らせ、「そんなに自分の命やコウが大事じゃないのかっ!」と掴みかかろうとしてしまったところで、コウに止められた。
肩に手を置き、ゆっくりと左右に首を振る。
その動作には余分な部分が一切合財なく、ただただ止めたいだけの心が伝わってきた。
コウは小さく言う。
「ナナカマド博士を怒らないで……」
願いのようで、望みのようで、たった一つの心配だけがあった。
反則だ、ヒカルは思った。
そんな顔をされては自分が弱い者苛めをしているようではないか、とも思った。
実際にコウは悲痛な面持ちで、なにかの罰か屈辱に耐えるかのようなものだったからだ。
「分かった……」
これではヒカルが折れるしか、他に道はなかった。
それは朝の出来事。