ファイアレッド・リーフグリーン編


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 オレンジバッジを受け取ることができたトモエは、ハナダシティ側にある町・ヤマブキシティを目指したのだが……。



「すまないね。現在ヤマブキシティは関係者以外立ち入り禁止なんだよ」
「そ、それってどういうことですか!?」

 あろうことか、クチバ側ゲートの警備員にストップを食らってしまったのだ。

 ヤマブキシティはカントー有数の企業都市だ。
 トレーナーアイテムを製造する大企業・シルフカンパニー本社のお膝元であり、製造ラインが多くある。そのため、シルフカンパニー社員らはヤマブキにて生活するため(サトシの父親も例外ではない)、自然とヤマブキシティ自体が他の町に比べて閉鎖的になることは別におかしい話ではないのだが、にしても関係者以外立ち入り禁止という事態は異常だ。不信感を抱かざるを得ない。


 食ってかかる猛獣のようなトモエを「どうどうどうどう……」とかざした手の平でなだめつつ、「し、仕方ないだろうっ。ぼ、ぼくだって上司に言われて交替で警備しているだけなんだからさっ」と弁明。
 これには逆上しそうになったが、ある意味言うことは正しい。警備員はゲートの警備をしているだけで、上がなにをしているかなんてことは知らされていないのだろう。

 上は上で勝手にあくどいことを。
 下は日々の生活のために仕事。

 仕方ないかぁ……と溜め息を吐いて、トモエはゲートを後にした。



 クチバシティの東にあるトキワシティとの道を繋ぐディグダの穴が存在する11番道路、海沿いを進む12番道路を経由し、シオンタウンへと辿り着いた。

 朝早くから出発したにもかかわらず、外側から回り込むような形になってしまったので、かなりのタイムロスとなってしまい、太陽はすでに地平線の向こうの皆さんへ朝を届けようと向かっていってしまったようだ。

「仕方ないから、今日はもうポケモンセンターにチェックインして、明日に備えようか」

 だねさん・ぴかさん・ぽぽさんはほぼ同時に首肯した。

 ポケモンセンターの近くにある大きな塔の建物を横目に、早くチェックインしようという心が急いで、赤い屋根が目印のポケモンセンターへと駆け込む。


 シオンタウンは慰霊の町として認知されている。
 数多の墓を有す塔型の墓地・ポケモンタワーはあまりにも有名だ。死を悼む人が、毎日絶えることなく訪れる。

 そういった事柄から、シオンタウン出身の人は心優しく物静かで生死を大切にする性分だという定説、というか迷信は、今でも割と当たっているのだ。

 だから、トモエもそういった事前知識を鵜呑みにして颯爽とポケモンセンターへ駆け込んだため、気づくことはなかった。


 町の異変を。
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