エメラルド編
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旅には、時に運も必要とされる。
カナズミシティでの二回目の朝。
スバメのさえずる声が、もう朝だよと歌う。
「う、うーん……っと」
大きく伸びをし、それにつられてアチャモは羽毛をさざめかせ、ジグザグマはぶるるっと身震いをする。新入りのコダックはしきりに首を傾げるばかりだ。
ハルカは寝間着から動きやすい旅の服装へと着替える。トレードマークとなってきた新緑色のバンダナをきゅっと締めて、ポケモンセンターのコインランドリーから昨晩洗っていた着替えを取りに行く。乾燥機にもかけていたので、綺麗に乾いていた。
ハルカの他にも多くのトレーナーでごった返しており、中にはジムリーダーの娘であるハルカでさえ、一度も見たこともないような珍しいポケモンを連れた人もいた。
お次に共同洗面所へと移動して、歯を磨いたり顔を洗ったり髪をまとめたりする。
それから食堂へと移動して、流れ作業のように一人と三匹分の食事を受け取ると、手頃な距離にあった窓際の席に着き、アチャモ達をボールから出して一緒に朝食をとった。
ハルカはサンドウィッチを頬張り、アチャモ達は各々好きな木の実を食べている。
「――席、いいっスか?」
「え、あ、はい」
ふいに湧いて出た声だったので、ほぼ脊髄反射で応答してしまったハルカが後悔するよりも早く、その少年は向かいの席へと座っていた。
一瞬、少年の髪が白銀で、白くモンスターボールのマークが染められた新緑色の――ハルカと同じバンダナを巻いているんじゃないかと見間違えたのだが、次の瞬間にコック帽がへにょりとなったような白い帽子であると理解する。
その風貌については事前知識があったので、それとなく言ってみた。
「ミシロタウン出身?」
「ああ……けどなんで分かった?」
「もしかすると人違いかもしれないけど、君のお父さんに会ったから」
「父さん……じゃなくて、オダマキ博士に会ったのか?」
「以外に誰がいる?」
彼がユウトで間違いないだろうと、ハルカは確信する。
テーブルの傍らではアチャモ達が、彼のポケモンだと思われるミズゴロウとなにやら話しているようだった。
「……ってことは、お前が父さんを助けたジムリーダーの子供か?」
「事実ではある」
しかし父親であるオダマキ博士と比べて、あまり似ていない。顔つきとかの話ではなく――顔つきはそれなりに似てはいる。だが子供のような大人だったオダマキ博士とは真逆で、大人のような子供なのである。内面が表情に出る所為か、ユウトは同年代よりも大人びて見えるのだ。
どこかお祭りで子供よりもはしゃいでいる親を見た時のような微苦笑で「いや、親だけど恥ずかしいよ。研究者としては凄いってのは分かっているけど、大人としては半人前みたいだからさ」と頭を掻きながら言った。
「同意」
ハルカは短く返す。
「それにしてもこんなところで会うとはなー、ちょっと恥ずかしいな」
「こっちは君に会えてとても安心したよ。割と落ち着きのある人間でね。反面教師といった感じかな」
ユウトは「かもな」と笑った。