エメラルド編
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ちょっとノーマルカップリングのように感じる描写があるかもしれません。
ただ単にハルカが男性に弱いというだけですが、ご注意下さい。
「――ハルカちゃんはお父さんにそっくりだねぇ。きっと将来は立派なジムリーダーになるに違いない」
「いやいや、お父さんを遥か通り越して、チャンピオンになってしまうかもしれないよ」
今から十年ほど前――正確な時期は定かではないが、ハルカが小学校に入る前のことであると本人は記憶している。
その頃、別の地方のジムリーダーに就任されたばかりのセンリを祝福しにやって来た人々が、ナマケロとじゃれ合うハルカを見てこう言っていたのだ。
ハルカは無邪気な質問で返す。
「ねえ、おかーさんにはにてないの?」
大人達が顔を寄せ合い、気まずそうにしたのは明らかにハルカが母親の名を出したからだ。どうにも母親の名を忌避しているようにしか見えない。
なんとか取り繕おうと、大人達が矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
「に、似てるわよ。そうね、髪の色とか……」
「そうだな、そっくりだ……。は、ハルカちゃんは二人の自慢の娘さんだよ」
眉をひそめてやっと褒める。
幼いハルカにはそのわけも分からず、とにかく褒められたことだけを喜んでいた。
ハルカは今になって思う。
あの時、何故皆して父を褒め称え、母の名を忌むような口ぶりだったのか――――それは十年近くたった今でも分からない。
分からない――