プラチナ編


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 そのラズワルドを苦笑しながら眺めていたヒカルであったが、コウが袖を突っついたことで思考は中断される。


「ねえ……あの人なにしているんだろう?」



 顎で指し示した先には、自動ドアの前。中年くらいの男性が立っていた。
 それだけの光景であればよくあるものであり、わざわざ神妙な顔で見ることもない。……しかし、その男性には少々おかしな点が幾つかあった。

 まず第一に服装だった。
 寒冷な気候のシンオウ地方とはいえ、暑い季節。男性の格好は薄手のブラウンのコートの襟を立てている。肌をわざわざ見せないようにしているようで、TPOにあった着方をしているようには見えない。

 あともう一つ、ポケモンのために来ているようには見えなかったからだ。
 もし彼のポケモンがヒーリングルームにいるとしたら待合い室のソファにゆっくり腰掛けているはずであるし、やけにそわそわしていて、誰か人を待っているというふうでもない。
 ……それはまるで誰か探しているようで、しばらく二人はその男性を観察していた。

 しかし、見るということは見られても良いということ。


 二人分の視線に気づいた男性は、真っ直ぐヒカルとコウに大股で近付いてきた。


「ちょっといいかな。駄目だと言っても断るけれど……なあに、ポケモンセンターの入口で構わない」
「は、は、はいい……」

 人じゃないような鋭い双眸に屈服する二人。

 ポケモンセンターで大騒ぎになったら、それこそ何人もの人たちが巻き込まれるか分からない。そして恐怖の相乗効果による判断だった。


 ヒカルは無事に旅を続けられるか不安になっていた。
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