B短文
□20.御主人様のお気の召すまま
1ページ/2ページ
※学パロ
※秀半秀要素あり
「夏休みが明けた後、文化祭が来る。二ヶ月もあるだろなんてのん気に構えていたら何も出来ずにあっという間に過ぎるだろう、だから夏休み前に詳細だけでも決めておく。我らのクラスは一体なにをするか?何かいい案はあるか?とりあえずは何でもいいから思いつくままにのべてみろ」
そこから多数決や私の独断と偏見で決める、黒板の前に堂々と立ってそう言うのはクラスの副委員長である雑賀孫市である。
ちなみに、クラス委員である豊臣秀吉はテキパキと喋るのが苦手なので、進行は全て孫市に任せて、黒板の前…孫市の隣でドンと椅子に座って構えているだけである。
普通なら案はあっても恥ずかしがったりして(年頃の男子女子ゆえ)なかなか意見が出ないのだが、だが孫市の発言後すぐに「ハーイ」と前田慶次が勢いよく手を上げ、
「メイド喫茶がいいと思いまーす!」
孫市が何か言う前に勢いよくそのまま発言し、女子から「えー!」「ヤダーー!」と黄色いブーイングが上がるとと同時に孫市が先ほどまで手にしていたチョークが慶次の顔にクリーンヒットする。
「くだらんな。あんなヒラヒラした機能性の低い服を女に着せ媚を売る出し物など、古今東西既にやりつくされている」
「いや、メイド喫茶が出来たのってまだ10年くらいしかたってな……」
「祭ごとが好きだと豪語している前田慶次とやらがまさかそんなベタな事しか思いつかなかった訳ではあるまい」
「いやいやそんな事言うけどさ、ベタってものはいいもんだよ、昔から好まれる展開、つまり王道って事じゃん」
「成程、つまりベタにならぬよう貴様ら男子がメイド服に身を包み喫茶店をやるということだな」
「え?孫市さん話聞いてた?」
「なんでそーなんだよ!さやか」
「黙れ姫若子」
「誰が姫若子だ!」
「さて、誰が姫若子であったか」
「……んぐ」
「ではうちのクラスは男子メイド喫茶ということで」
そう言うと、孫市は男子メイド喫茶と黒板に書くと有無を言わさぬ目でクラスを見渡す。
「賛成!」「異議なし」「おもしろそう!」と女子から黄色い賛同の声が上がる。
「ちょっとまてぇぇぇ!」「えぇー!俺はただ単に孫市のメイド服が見たかっただけなのに!」「そんな不純な動機だからこんな目にあうんでしょ!お陰でこっちにまでとばっっちりだよ!どーすんの?」対して、男子の方からは悲痛な声が上がる。孫市の鶴の一声でもう決定だろう。彼女の決定を覆せる武士はこのクラスには居ない……いや、唯一の……
そんな男子の声を背景に、幸村は真剣な顔をして考え込んでいた……
(メイド喫茶か……俺は料理等は全く駄目だが……が、顔は良い。可愛さならそこいらの女にも引けを取らぬといっていい……むしろ、この学園一位二位を争うほどだと自負してる。
もしそんな俺がメイド服等着てしまったらどうだ?東京ミュ●ミュウすら真っ青の美少女の出来上がりではないか!?……もっもし、そんな姿の俺を政宗殿が見たりしたら………
――文化祭当日――
「Hey、真田幸村はいるか?」
ガラッと教室のドアが開き入ってきたのは、
「まっ…政宗殿!?」
幸村の隣のクラスの伊達政宗だ。
「っ!?……ゆ幸村?……っあ、いや…真田……」
幸村は慌てて動くたびにふわふわと揺れるスカートを押さえ、政宗に背を向ける。
「こんな格好…こんな格好の某を政宗殿にだけは見られたくなかったでござる」
こんな情け無い姿……うつむきながらそう震えるような声で言ってくる幸村の顔は真っ赤で少し目に涙が浮かんで見える。
「んなこたぁねぇ!!可愛いぜ!!」
そう怒鳴るように言った後、政宗は自分の発言にハッとした様な表情をしたかと思ったら、慌てて口を押さえ幸村に負けないくらい顔を赤くする。
「ま…政宗殿」
幸村は涙目のままゆっくりと政宗の方へと顔を向ける、
「……うっ…その……なんだ、可愛いと思うぜ」
「よかったでござる!某、某、政宗殿に変な目で見られることだけが気がかりだったのでござる」
勢いよく政宗に抱きつくと、顔を赤らめ潤んだ目で政宗を見上げるように見ると、小さくだがゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
「ゆ…幸村、放課後…文化祭が終わったら会えるか」
そう、幸村にだけ聞こえるような声で囁いた言葉にコクリと頷いた。
――文化祭終了後――
あたりはすっかり暗くなっているが、異様に明るい校庭で最後の締めであるライブやフォークダンス(任意のため踊る生徒はあまり居ないが)等が行われているのを、昼間とは打って変わり誰も居なくなった教室で電気もつけず真っ暗な中、幸村と政宗の二人っきり……
「真田……」
「政宗殿……」
幸村は着替えずメイド服のままである。
「その服すげぇ似合ってる……他の女なんかよりも…一番可愛かった。いや教室に入った瞬間アンタしか見えなくなった」
「政宗殿……」
政宗が前に進み、二人の距離が更に短くなる、
「何だかよくわからねぇこんな感情……だが、アンタが欲しくなった。アンタを今すぐ感じてぇ、幸村」
政宗は更にずいっと前に進み、幸村の腕を取る。
近距離で二人の視線が絡むとどちらからともなく、口を合わせた。
「幸村……すげぇ可愛い」
そう言うと、政宗は幸村のメイド服に手を掛け首にキスを落そうとしたところで、
「政宗殿」
幸村はガシッと手首を取り、ニコッと微笑むとそのまま政宗を押し倒した。
「ちょ…wait!!stop!待て!おすわり!!」
「政宗殿!某の一番槍(つまり童貞)で貫いて見せますぞ!」
真っ暗な教室で二人の声と、淫らな音だけが聞こえてくる、
「ああ〜んvすごぉ〜い幸村」
「天!覇!絶槍!!真田幸村ここにあり!!」
「もうらめぇ〜vvおかしくなっちゃう〜〜v」「某の槍で存分に狂ってくだされ」……よし!完璧な計画だ!!某の愛くるしいメイド服姿に政宗殿はメロメロになること間違いなし!その上、祭りということで多少テンションとやらも上がっているだろうから……某がちょっと突っつくだけでコロッといくに違いない)
幸村は当日のシミュレーションを終えると、自分の前の席に居る佐助に、
「佐助、文化祭の後夜祭の時俺と政宗殿の姿が見えぬであろうが、探さないでくれ」
「あーハイハイ、わかりました。だから、旦那も妄想は声を出さずにやってね」
幸村の言葉に死んだような目をしながら佐助は答える。
「先に大人の階段を登ってしまうが僻むなよ」
「ハイハイ、誰も僻まないから、だから上手く言っても(いかなくても)一々報告しなくていいからね」
「なんだ、童貞の僻みか」
「ほっといてよ!旦那だってまだ童貞でしょ!!(しかも成功するかまだ決まったわけじゃないし)」
「大丈夫だ、お前なら俺の後すぐ……じゃ無いかもしれないが、右手以外の恋人が見つかるさ」
「誰が恋人!(いやそうなんですけど)余計なお世話です!」
「ハイ!俺もその案に賛成です」
男子からブーイングが出る中、男子からは幸村が一人賛同する。
「ちょっと幸村!」
「裏切り者ォ!!」
「クラスの男子全員敵にまわしてもテメーはメイド服が着たいのか!!」
「もしかすると俺のメイド服が見たいから!だったりするのゆっきー」
「安心しろ貴様ら虫けらのメイド服姿など微塵も見たいとは思わん」
きゃー俺危険?とふざけたように言う慶次を潰したダニを見るような目で見る。
「むしろ見たいのは……だが、しかし、艶姿を皆に見せるのは……俺だけが見るならよいが……」
そうか、事が済んだ後着せれば……成程、彼氏が自分の服を彼女に着せて喜ぶという気持ちが分かるな……俺の服を着せられメイド服まで着せることが出来、一石二鳥ではないか。だがその姿を拝めば某の槍がまた滾ってしまうな……
…ブツブツと呟く幸村に佐助はこれ以上精神汚染されたらかなわんとばかりに出来るだけ机を前に引き、両手で耳を塞いだ。
「前田(空気の方)殿、孫市殿はお主のメイド服姿を見たいから、男子メイド喫茶の案に変えたのではないか」
「え?マジ!」
幸村の発言に一転して慶次は期待するような目で孫市を見る。
「フン、貴様らカラス共のメイド服姿を見たら蔑んだ目で笑ってやる」
「え、マジ!笑ってくれるの孫市!俺頑張るよ」
「褒めてねーよそれ、目ぇ覚ませ空気」
さっきも述べたが孫市と幸村に敵う者はまず居ない。だが唯一の…男子は悲痛と希望に満ちた目で最後の砦、秀吉を見る……が、
「……ということで、決定したがよいか豊臣」
「うむ、よいだろう」
((ちょ、秀吉さーーーん!!!))
大半のクラス男子が心の中で叫び声を上げる。
「……で、なにをやるのだ」
((秀吉アンタクラス委員だろ!?寝てたんか?))
「メイド喫茶だ」
「そうか」
((大切なところ端折った!!!確信犯だよこの女!))
「安心しろ我ら女子が全て当日までに段取りを完璧にしてやろう!カラス共は当日までだた指を銜えて見てるがよい」
「そうか、任せる」
((任せちゃダメだろ!!))
男子の血の涙を流しながらの心の叫びも虚しく、このクラスの出し物は男子メイド喫茶へ決定されたのだ。
「秀吉!!文化祭で秀吉が●●●[ピー]するって本当かい!?」
文化祭の話し合い(?)がされたHRが終わりを告げるチャイムが鳴り終わらない内に、隣のクラスの竹中半兵衛がバンッ!とドアを壊す勢いでそう叫びながら入ってきた。
「●●●じゃねぇよ!メイド服だよ!!」
「…っていうか秀吉だけじゃなくクラス男子全員だからね」
「ああ…僕の秀吉が、ただでさえ餓えた狼の中にいる子羊なのに……」
「オーイ、話聞いてる?」
「誰が狼で、誰が子羊だって?」
「メイド服なんて着たら……葱を背おった片…鴨のようじゃないか!!メイ●ガイも裸足で逃げ出すこの姿!ああ!僕の秀吉が穢れてしまう!!」
「テメーの妄想の中では既に穢れてるよ」
バッと顔を両手で覆う半兵衛にクラス全員白い目で見る。
「つかよー、さっき決まったばっかりなのになんでオメーが知ってんだ?」
「決まってるだろ、愛の力だよ!この教室に盗聴器を仕掛けてもらってるからね、これで秀吉に危機が起きてもすぐ助けに行けるだろ」
「犯罪だ!!愛の力じゃなくて科学の力だ!!」
「どや顔して何ストーカー宣言堂々としちゃってんだよ!」
「安心してくれ、君達のクラスの副委員長の了承済みだからね」
「なにしてくれちゃってんだよ!?さやか!俺等のプライベートがこの変態にだだ漏れじゃねぇか!!」
「フン、カラスが貴様らに心配するようなプライベートなどあったのか」
「と言うことは、某の政宗殿への滾る思いが変態殿に筒抜けに」
「いやそれは既に(政宗以外の)全校生にだた漏れだから」
「彼女は一ヶ月の食堂フリーパス券で了承してくれたよ」
「やっすいな!!俺等のプライベート!つうかよ、それ俺にも寄越しやがれさやか!」
「てか、教室にプライベートもクソもないんじゃない?」
「じゃ、今度昼飯奢るから俺とデートしない孫市?」
「そんなことより慶次君!」
ビシッと無駄に美しくポーズを決めて、慶次を指差す。
「いくら頼んでも見せてくれないからといって文化祭に託つけて秀吉のメイド服姿を拝もうなんて!!!」
「ほう、そうだったのか慶次」
「違うから!!!」
孫市の言葉にマジ泣きしそうになりながら必死に弁明する。
「何でそうなんの!!つか、俺がメイド服を拝みたかったのは孫市で秀吉のは一ミリ単位も見たくねぇ!!」
「そうだったのか慶次よ、我は不必要であったか」
少し落ち込んだような口調で言ってくる秀吉に、慶次の方が慌てる、
「え、いや違うて言うか……うん、秀吉も必要だよ」
「やはり秀吉を狙ってたんだね慶次君!」
「違うから!!つかやっぱりって何?」
俺そう言う目で見られていたの!?友達だと思っていた者にと、結構ショックを受ける。
「もしかして、これが噂に聞くツンデレってヤツか?慶次」
「チカちゃんまで!違うから!!つかなにこの空気?」
「そうか我のメイド服姿は友にも拒否される姿であったか」
「いや…違…「そんなこと無いよ!!秀吉唯一無二の友である僕は秀吉のメイド姿が見たくてたまらないよ」
「いや、それもどうかと思うが……」
「もう、慶次君のことなんて忘れて僕だけのメイドでいて秀吉」
「半兵衛……」
「え?何か俺故人っぽくなってない」
「すまぬな半兵衛、どうやら取り乱してしまったようだな」
「いいんだよ秀吉、僕は何より君のために居るんだから」
「半兵衛」
「秀吉!」
クラス全員が見守る中で、二人っきりの世界になる。