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□明るい未来計画
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もう嫌、ここが痛いの、苦しいの。
そう駄々をこねた君が、またいつもの
ように突拍子もないことを言い出した。
科学者だってそんなに暇じゃあない。
たかだかそこらの小娘の、心の傷のた
めだけに、スペアのハートなんか作る
ものか。
そんな僕の言葉も聞かずに、君の明
るい未来計画は進む。
誰も傷付かないように、ハートはすべ
て鋼にして。差別はいけませんね、カ
スタマイズする好きな顔。街を歩くの
はカテゴライズの容易な人間ばかり。
鈍い鉛色した未来計画。
全くもってつまらない！傷つくこと
のない人間には青空は見えないって、
誰かの格言を忘れたのか！
僕の言葉も聞かずに、君は未来の計
画に、つまりは自分の傷心に酔う。
下らない、全くもって下らない。人
の心に期待もせずに、どうして人でい
られるつもりなのだろう。
つらつらと鉛の言葉を吐き連ねる君
の横で、僕は届かない言葉を叫ぶ。
君がその計画に加担するなら、僕に
だって考えがある。鋼のハートの代わ
りに君が捨てる生身の心、体、君の嫌
いなそばかす顔。廃棄される前に、全
部僕が集めてしまおう。そして僕だけ
の君を作ろう。
君のだいっきらいな君で出来た、僕
のだいすきな、生身の君。
ロボットの君があとから返せって言
ってきたって、鋼のハートで、オイル
の涙で泣いたって、僕には一切知らな
い話。
【2012.10.05.】
⇒あとがき