怠惰。
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 家に帰り母からそのことを聞かされた俺は、その日の夜から高熱を出して寝込んだ。結局それで葬式にも出れず、本当に本当に、あの日が淳夫との最後になってしまった。

 誰もいない家の中で、ひとり熱にうなされる。あの娘のそそくさ逃げていく背中と、アイツの小さな小さな背中が瞼の裏でダブっていった。



 熱が引いてからも外に出る気は起きなかった。窓の外を見ても、そこに広がるのはセピア色の世界。
 彼女からの頼みを投げ出して、友人へ真実を伝えることも怠って。いつの間にか俺のもとに残ったのは、消えぬ罪悪感と、色を失った世界だった。

 それから、俺の様子を心配した母に連れられて、家の外に出たのは数度きり。相変わらず色のない世界で、時たま感じる彩があった。空から降る濃い桃色、揺れる白いスカート、小さくなった背中の黒いランドセル─…


 結局俺は世界を拒絶した。俺を責め立てるこの世の全てと向き合うのが億劫になった。
 部屋に閉じこもって、天井を見つめて、俺は世界を遮断する。






(向き合うことで、自分を断罪することすら、億劫で。)





【2012.10.07.】

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