あ い に い く
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じんわり辺りに滲む夕焼けに、涙と笑いが止まらない。
こんな屈辱は初めてのことだ。
ああ自分は、いつからこんな嫉妬深い人間になったのか。


瞼を下ろせばそこに映るは可愛い可愛い君の後ろ姿と、俺の全く知らない背中。

しっかりと脳裏に焼き付けて、それから目前の夕陽を凝視する。
2つの背中の残像が、真っ赤に染まった。

…これはこれで悪くはない。


ポケットの中の硬くて鋭い感覚を自分の指で確かめた。
指先の触覚が微かに変化して、液体の流れ出る感覚。
このレベルすら痛みがあるのだから、これを体に突き刺したら、君は痛くて泣いてしまうだろうか?
そう考えたら自然と、よく似合うと言われるクツクツとした笑みが口元に零れた。

俺の数少ない理性が総動員で感情を止めようと警鐘を鳴らすけれど、どうにも楽しみが勝ってしまうものだ。

君はどう言い訳をするだろう。
君はどんな風に鳴くのだろう。
ああきっと、いつもベットの上で聞くのとは違う、素敵な音を鳴らしてくれる。


俺を裏切るなんて、とても素敵なことをしてくれた君に、俺は今すぐ会いたくて──お礼がしたくて仕方がないよ。



だから

もうすぐ会いに行くから

それまで待っていておくれ。




いつも肌身話さず身につけている十字のネックレスを引きちぎって、アスファルトの上にカラリと落とした。

それをスタートの合図代わりに静かに歩むスピードを上げる。




ああ早く君に会いたいな。





今度は夕陽なんかじゃなくて

俺が君の背中を赤に染めて、






   
(まぁそのとき、君は動かなくなっているかもしれないけれど。)




【2010.02.13.】


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