逃げる男を追いかけて、
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「…あれ?」

2人で地面に書かれた横断歩道の白い部分だけをきゃいきゃい言いながら歩いていますと、顔を上げた美羽が不思議そうに首を傾けました。

「信号、青になってるじゃん。」


つられて亜梨紗も顔を上げますと、確かに暗い商店街の入り口の横に立つ信号は、緑色に輝いています。

「ん、本当だ。」

きっと私なにか勘違いしてたのかも、と亜梨紗は美羽と顔を見合わせて笑いました。


するとそのとき、



びゅゅゅうぅぅうぅう!!!



歩道の左右から、突然風が吹き荒れました。


2人はきゃっと小さく声をあげて制服のスカートを抑え砂が入らないようにとぎゅっと目をつむりました。
そんな彼女たちの耳にどこからともなく、ちりん、と音が響きます。

(…鈴?)



どれくらいそうしていたのか、
ようやく、しゅう…と風邪が止みました。


まったく何が起こったのかとゆっくり目を開けまして、そして目の前のあまりのことに、2人は言葉をなくしました。



──…いったいあの人気のない、暗い北通り商店街はどこへいったのでしょう。


提灯や灯籠の灯りが灯る軒並みから、活気と美味しそうな匂いがゆったり流れてきます。

騒々しいその光景はまるでお祭りのようで、つい二人は心躍らせました。


…それにしても、

「さっきまでこんなんだったっけ…?」

「絶対に違ったよね…。」


2人は顔を見合わせて、ただただ困惑の表情を浮かべます。


振り返りみれば、先ほどまでのまばらな人影はどこへやら。すっかり人気のなくなった南通り商店街が己のうちを照らす白い光とポツリたたずんでします。
空からは脳天気な満月がそんな彼女たちと、様変わりした北通り商店街の入り口の『玄武商店街』という看板を静かに照らすばかりでした。







(不思議な場所に辿り着いたの。)





【2010.03.10.】

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