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□雨が好き
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「雨、嫌い?」
「んー…、そういうわけじゃないけど…
2人でいると毎回降られるのは迷惑かな。」
「、なんで?」
「遊園地行こう!とか言い出しにくいじゃない。だってきっと雨降っちゃうし。」
「、ああ。」
僕が頭の──眉の上あたりに手を添えて例のネズミの真似をすると、そういうこと、と君も同じポーズをする。
幸い雨の公園なんてあんまり人がいないから大丈夫だけれど、端から見ればただの学生バカップルだ。同級生にでも見られれば、2人の黒歴史になること間違いなしだ。
「雨のネズミの国とか嫌だもん。」
はーっと諦めたように息を吐いて君が見上げた空には、一向に晴れる気配がない。
「俺個人は晴れ男だけどな。」
「あたしだって晴れ女だよー!」
むっとする顔に、別に君のせいにしているわけじゃないと取り繕う。
が、当の本人はさして気にしていないようですぐに何も言わず空を見上げた。
「…2人揃うとなんでこうも雨なんだろ?」
立ち上がってそう言った君の肩から、僕のスポーツタオルがばさりと落ちた。
「俺はそこまで嫌いじゃないけどな…」
「、なんで」
雨の日の暗い空は実際よりも夜を近くに感じさせるから、まだ4時頃なのにそわそわ落ち着かない心地がする。
そろそろ待つにも潮時か、とタオルを自分の頭に乗せて僕も立ち上がった。
「雨の日にあんまり長く2人でいると、なんだか夜更かししてるような…悪いことしてる気分になって、早く帰らなきゃって思わない?」
「あー…、同じこと考えてた。」
「あたし、それが嫌いなの。
一分一秒でもいいからさ、なるべく長く2人で一緒にいたいじゃない。」
照れもせず君が言う。
「だから、雨は嫌い。」
…なるほど。
つまり君の雨が嫌いな理由は、
「それだけ俺が好きなんだ。」
ってことでしょう?
「、まあね。」
頬を染めてそういう君は、
最高に可愛かった。