5:5の和議条約
1ページ/1ページ



「…なにこれ?」

目の前にはおかず。
皿の上にはトンカツがオンリーで、ち
ょこんと乗っかっている。

「朝からトンカツって…イジメ?」

「"勝つ"なんちゃって、」

「…別に受験生でもあるまいし。」

布巾で手を吹きながら、彼女がへへへ
と笑った。


「いや実はね、本当は昨日の夕飯にな
るはずだったんだけど、ちょっと事情
がありまして…」

「なに?昨日の夜なら、時間通りに帰
って来てたじゃん。」

そういえば昨日の晩飯は妙に寄せ集め
たような質素なものだった、と思い出
しながら彼女に問うと、バツが悪そう
にキッチンに戻っていってしまった。

「昨日お昼食べに行ってから夕飯の買
い出し行って…あ、一昨日の夕方のニ
ュースでトンカツ特集してたじゃない
?」

「うん」

「それで『あー、夕飯カツ食べたい』
と思ったから材料買って、家帰って揚
げて…、で、昼寝したの。」

「、あー…」

「そしたら夢を見まして、」

「…どんな?」

「キャベツの妖精がトンカツの横の覇
権をめぐってレタスの妖精と全面戦争
する話」

「……」

「最後に『私たちの命運はあなたにか
かっている!』とか言われて決断迫ら
れちゃって!
そしたらもー…目が冷めてからもそれ
ばかり気になっちゃって、答えが出る
前にトンカツ出すわけにはいかないな
!…みたいな…」

「…なるほど」

昨日の夕食が永谷園のお世話になった
のと、今目前のトンカツの横が荒野の
ごとく殺風景なのはそういう理由か。

「で、結局どういう結論に?」

「ん、」

ゴトリ、と音がして目の前に木製の茶
色いボウルが置かれた。

「キャベツとレタス、半分ずつで混ぜ
てみたの。」








:
「…あんまおいしくないね」
「、そうだねー…やっぱ駄目か。」





【2010.04.01.】


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ