それでも地球は軌道を廻る
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みんなは私たちを太陽と月と地球に例える。


彼が太陽で私が地球。
いつでも降り注ぐ愛を受けて羨ましいねと、みんなは笑う。


私が太陽で彼女が月。
いつでも私の横にいる彼女の姿は、クルクル廻る月のよう。


彼が太陽で彼女が月。
彼と彼女は惹かれあっても、触れ合うことはないからと。
だから安心しなさい、と。

でもそれは違う。
嘘。

月と太陽が触れ合うことはないなんて、そんなものは地球から見た話。


私は知ってる。


月が地球の軌道の内側にいるとき、月は地球より太陽の近くにいること。

地球が雲に覆われているときだって、月からは太陽の光が見えること。

満月の夜、月は太陽の光をすべて受けていること。

その光は地球に降り注ぐ日光より、はるかに優しく輝いていること。



今日だって太陽と月はひとつになる。
地球の上の私はただ、眺めることしか出来ないのに。

そんな私に同情するかのように、今日は朝から雨が降り止まない。


「無駄になっちゃったな、これ…。」

色違いの日食グラスを机の奥深くにしまってベッドに寝転んだ。


鳴り止まない携帯はきっとどれも、彼と彼女が雨の中で抱き合っていた話。

そんなことはどうでもいい。

なにがあったって、地球は太陽の周りを廻り続けるしかない。







それでも球は軌道を廻る
(騙されきれないのが悲しいの。)




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