遠い空の向こう君は何を思う?
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部屋に全ての荷物を運び込み、
一息ついた。


とりあえず必要な荷物だけ少し出して、
あとの片付けは明日から。

部屋の中はまだダンボールの王国状態だし
荷物は重いけれど
気分は、軽い。



今まで住んでいた町と別れを決意して、
すぐに行動に移した。

思い出はあの町に置いていくって決めたからほとんどの荷物は捨ててきた。

あれだけ片付けられないってからかわれた私だけど、やればできるでしょ?



窓を開けても
そこに広がるのは見慣れぬ景色。

この景色の中にあなたはいるはずがないから
あなたを探す必要はもうないね。

まだちょっと落ち着かないけれど、
その内慣れてくるよね。



私はこれから新しい場所で、
上手くやっていけるかな?

もうあなたのことを
思い出さずにすむのかな?


部屋を少し片付けたら
夕飯の買い出しに出掛けよう。

確か近くにスーパーがあったから。


なんにしたって、
たぶん出来るはずって
思わなきゃしょうがない。





なんだって少なめ。

冷蔵庫は小さいから
あまり食材は買ってこなかった。

カロリーは気になるけど
気分は、軽い。



料理を作りながら音楽をかける。

最近人気の女性ポップグループの新曲。
新しい生活への期待と不安を表した曲。

引越を決意した夜に、
町で出会った人が演奏していた曲。

まさに今の私にぴったり。


今日はなんだかすることもないし、
音楽聴きながら
明日からの計画を立てよう。

今日はまだ、呑気なリズムに揺られていたい。





いつの間にか外は真っ暗。

でも窓から見える風景は昼間みたい。

ただでさえ狭い星空は
街の明かりに負けてしまう。


いつかあなたも星空みたいに
たくさんのまぶしい光に溶けちゃうのかな?

私はこれから新しい場所で、
上手くやっていけるかな?



でも私は
明日から頑張らなきゃ。



君のことはもう思い出さない。

君が街並みに溶けて消えちゃったって
私には関係ない。





携帯画面の君の名前を見つめて
小さく微笑む。

新生活を送る上で、
なるべく荷物は軽くしないと。



要らないモノは捨てないと、
人は前には進めないんだよね。

わかってる。


だから、

12時が来たら削除ボタンを押すから、

それまではあなたを思わせて。






明日からは
出来るはずって、
思わなきゃしょうがない。






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