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□Hello,
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目の前の光景に愕然としたときの私は、ついさきほどまで自室にいたときと同じように裸足。ヘッドフォンをつけて、手にはペン。
でも目の前の光景は、
「…なんだこれ…?」
『Hello,boy.』
唐突にどこからか声が聞こえた。
『…Hey boy. 聞こえてないの?』
この年になって"boy"、なんて形容されることがあるなんて思いも寄らなかったから、初めは自分のことだとわからなかったのだ。
「…ここはどこなんですか…?」
『どこだと思う?』
「…わかりません。」
『帰りたい?』
「…そりゃあ。」
誰なのかもどこにいるのかもわからない人間と、さも当たり前のように会話をしている自分が、不思議と、不思議に思えなかった。
『なんで帰りたいの?』
「だって仕事が…」
『…仕事?』
微かに嘲笑されたのが分かって、私はむっとした。
「…なんなんですか、あなた。
ここはどこなんですか?
誰なんですか?」
『Jasperではないわ。』
声の主が軽やかに言った。
「…なに言って…」
『帰りたければJasperを探して。』
有無を言わせず、という感じで彼女は言い放つ。私はそれについていけない。
『チャンスは3回、
…でも今のを含めると2回ね。
残り2回でこの中のJasperを見つければ、それでOK.』
「……、」
Jasperって誰だよ、と、こちらから切り出す前に天の声(…と呼んでいいのだろうか?)は言葉を続ける。
『Jasperはこの中で一番おかしな人よ。
…じゃあね。』
「あっ、ちょっと…」
いくら呼びかけてももう返事は聞こえない。
…辺りを見渡して思わずため息が出た。
こんなところでそんなことを言われても…。
仕組みの見えないほど巨大な空中ブランコにしがみつく二人組。
一心に石を拾い続ける少年。
体が虎の女、顔が鳥の男。
砂の落ちない砂時計が時を刻むこの場所で、
一番の変わり者は誰?
H e l l o ,
(J a s p e r ヲ、 サ ガ セ ! )
【2010.01.21】