週末のホラー・チューン
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「おわっ!」

テレビ画面に向かってくる女の顔に思
わず声を上げた。

 心霊番組なんて見るのはいつぶりだ
ろうと考えて、男は彼女のことを思い
出した。ある日突然彼の目の前から姿
を消した、彼女。怖がりのくせに知り
たがりの彼女はコレ系の番組が放送す
る度に見たがるものだから、結局二人
はいつもテレビの前に並んでいた。

 あの頃はこんなんじゃ別に驚いたり
しなかったんだけど、と男は考えて簡
単に結論に至る。なんてことはない、
隣に彼女がいたからだ。自分より怖が
ったり、驚いたりする人が隣にいれば
人は冷静になれるし、「今のはないだ
ろ」とか「合成くさいな」と言葉をか
けて、それに反応してくれる人がいる
だけでもこういうものはずいぶん違う。
 そう思うとなんだか、

「俺が怖かったのはお前らじゃなくて」

“独り”だったみたいだと、恨めしそ
うな顔をした画面の女に男は苦笑した。


彼女もどこかでこの番組を見ているのだろうか。
(それを思うのは画面を通じた再会のようなもので、)
見ているとしたらきっとその隣には誰かがいるのだろう。
(だとしてもそれはこの部屋には関係のないお話。)


【2012.09.03.】


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