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□まよねぃず
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帰りにスーパーに寄ったときも彼はしきりにマヨネーズを気にしていた。
「うわっほんとに原材料に書いてあるよ!」
家にある、といっているのに「記念に」などとわけのわからないことを言ってマヨネーズをカゴに入れようとするコイツとは、結婚できないなと思った。
そうしたことで時間をとられて、家路につく頃には空の中央のひまわりも熟れたトマトみたいになってビルの向こうに帰ろうというところだった。
それを眺めて、今晩はトマトのホール焼きにしようなんて思っているときに彼は、数歩前をむき出しの苺を食べながら歩いている。
彼の大好物は苺だ。
だから安くても高くても、私が嫌いだと言っても、スーパーに行くたび必ず1パックは買って帰るのだ。
「油と卵と酢を混ぜればいいってことはさ、家でも作れるんだな。」
「、そうだね。」
まだマヨネーズを気にしているのかと、呆れてふふふと笑ってしまう。
私たちの暮らすアパートは、少し長い坂の先にある。
坂の上に沈んでいく夕陽が眩しくて後ろを振り返ると、自分たちの長い影が足に引きずられていた。